第9話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります


私は、あの国を許さない。


私は、先祖を許さない。


私は、家族を許さない。




許せるものが無くなって、私は、独りで生きていくことにした。


水と日光さえあれば何週間も生きていけるこの体で、生まれ育った森を抜け、コンスタンティノポリスから更に西に。

列車と貨物船にまぎれ、イギリスへと逃れる遥かな旅路。


日雇いのわずかな路銀で、2年かけてたどり着いた。


それでも、私を苛むこの左手を治す医者は



00_キギ


イギリスにも居なかった。









01_ロゴ









キギはタフタである。




タフタとはオスマン帝国の攻略によってコンスタンティノポリスから内陸のさらに奥の森へ追いやられた一族を指す。

タフタの一族は絹織物作りに長け、様式化された花文様と幾何学模様は世界中で重宝されていた。








進軍に追われ森に身をやつしたタフタ達は、今度は麻や綿で布を織った。
彼らの織る青や緑は自然への敬意と畏怖の表れによるものである。

過酷な自然に順応しようとする彼らに、今度は森自身が牙をむいた。


風土病の蔓延である。


罹患すると体温が下がり、食物を受け付けなくなる。
四肢の筋肉は硬直し、肌は朽ちて次第に苔と蔦が絡まるようになる。

肌の樹皮化は加速度的に全身へ進行し、やがて意識を喪失する。

しかし心臓が停止しようとも、遺体は腐らない。

タフタの一族はこれを「森への回帰」と考え、
              ・・・
全身が硬直した遺体をその地へ植えた。


キギはその儀式から抜け出したタフタであった。



02_捜索



林を抜け、坑道を避けて川を渡り、島の中央部へ。


キギは先へ進むことを拒むような雨林のうねりを造作無く越えていった。


島の大地を薄く覆っていた雪はある地点から急に無くなっており、にわかに気温が上がり始めている。

それまで島のあちこちで散見されていた集落のような廃墟はもう見当たらない。


代わりに石造りの小さな祠が、まばらに見られるようになった。

それらの正面と思われる側は一様に島の中心部を向いている。


英国女王の宝玉がなぜこの島にあるのかは不明だが
この島に何かが奉られているとすれば、それは間違いなく進行方向の先にある。
キギの予想は、半ば確信めいたものだった。

祠の間隔が短くなり、道はどんどんと険しくなってゆく。


そして、幾度目かの断崖を登った先に。



03_発見

「見つけ……た……!」



キギは島の最奥へとたどり着いたことを理解した。


島に点在する無数の道標である祠が同心円状に向き直る高台。

その中心にひときわ大きな祠があった。ここが島の中央である。


キギは辺りを確認する。ヴァイスもナタリアもまだここへは来ていないようだ。




しかし気付くことができない。ヴァイスもナタリアも殺された真実に。





04_忍び寄る影




その魔の手が自らにも及ぶという必然に。




05_忍び寄る影2



「木人が一番乗りとは、皮肉なものだな。おい」







06_おい


背後からキギの肩を無造作に掴まれた。


「誰」「近づかれ過ぎた」「どうやって」「知らない声」「敵か仲間か」「武器は」「怪我したか」「足音は無かった」

散発的な思考が明滅し、結論も出ぬ間に飛びずさった。



しかしキギは見る。相手の姿を。

大きなターバン、腰に提げたヤタガン。三日月の首飾り。「木人」。

瞬間、全ての論理的思考が消し飛び


目の前の男が殺すべき対象に変わった。








07_威嚇  

「イェニチェリイイイイイィィィィィィィィ!!!」



構えた大鎌を横薙ぎに振り抜く。

しかし目の前の男は、まるで強風に煽られた新聞紙をはたき落とすかのように軽々と踏みつけた。



「ハッハ、親父の仕事で呼ばれても困る。俺にもナルギレって名があるんでな」

08_振り向き


ナルギレと名乗ったその男は、キギに警告する。

09_武器止められ 「おっと抜こうなんて思うなよ。お前はもう俺の間合いの中だ」

ナルギレが半身で相対した後ろ側、左手は既にヤタガンの柄に添えられていた。


大鎌を抜けば切られる。後ろに逃げれば武器を見捨てる上に、崖に阻まれる。実質退路はない。


だが、キギの思考は目の前の男への怒りのみがあった。

「お前たちは!200年前にタフタを森へ追いやった!私たちを森の毒に塗れさせたこの屈辱を! 私は! 私は決して!」

相手を声で破壊しようとさえ思えるほどの衝動が、怒号としてナルギレにぶつけられる。

「私は決して許さない! この体を! あの森を!! 逃げたタフタを! 貴様達イェニチェリをォォォォ!!!!」



ナルギレは意にも介さない。

「そう熱くなるな。”反応”が進むぞ」


先祖と自分の汚辱を、ここで刺し違えても雪ぐ。


キギは大鎌を引き抜いた。

しかし、振りかぶろうとした体は大きくバランスを崩し、キギは地面に倒れこんだ。

体に力が入らない。全身の血の気が引ききったような眩暈に襲われ、立ち上がることすらできない。


「グッ……ウゥ……ッ!!」



10_樹木化
・・・・・・・左手が動かない。否、衝いた左手が地面に根を張っていた。

五指は根となり腕の蔦は肩まで絡みつき、樹皮からは新たな葉が芽吹いていく。

ナルギレがゆっくりとキギに近づいた。


11_伐採 「舐めるなよ? 俺がお前を殺すつもりなら、声などかけずにそのまま首を刈っていた」

重力に逆らえずしなだれたキギの頭を髪ごと掴み、首に刃を突きつけるナルギレ。


「どの道お前はもう長く生きられない。ここはあの森の何千倍もの瘴気があるからな」


「……瘴気……?」

息をするのもやっとの声で、キギが言葉を返す。



「お前らが患っているのは森の毒でも風土病でもない。瘴気なんだよ」



その言葉を受け止めることもできないまま、キギの意識が混濁していく。

全身の硬直が始まった。



「オイ、死ぬな! 最期に聞きたいことがあるんだ! あの男に会ったんだよな!? あの男は――」


ゆっくりとキギの目が閉じられていく。生を諦めた者の重みがナルギレに伝わる。



堰を切ったようにキギの服や髪の隙間から無数の蔦が生え、掴まるものを求めるように伸長する。


ナルギレは掴んでいた腕を取られそうになり、慌ててキギの遺体を手放した。


「っ畜生!!」

11_キギ負け

遺体は、まるで木陰にもたれるかのように打ち棄てられた。肌の樹皮が首から全身へと広がってゆく。
身に着けていた服にはたちまち緑の苔がむし、灰のように朽ちていった。




ナルギレはそれを横目で見送ってしばし何かを逡巡したのち、かつてキギだったものに大鎌を立てかけてやった。





鎌の柄を抱きしめるように蔦がゆっくりと絡みつき、成長はそこで止まった。


12_死






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第8話


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00_ロゴ




―本隊上陸 2ヶ月前―





男のような声が、聞こえる。

「なあジェーン、今日はお前を殺した奴を探しに来たんだ。少し落ち着いたらどうだ?」


女のような声が、それに応える。

「いやだわジェーン、どんなときも喜びを忘れないのが私よ」


カップルのような声が、生気を失い静まり返る廃墟にこだまする。

「見てジェーン。素敵な廃墟に力強い緑と綺麗な白い雪のコントラスト。フフフ、あなたのピアノで踊りたくなっちゃう」


「こんなところで足を滑らせてもみろ。次は雪を殺さなくちゃならなくなる」


「いつもあなたは心配性ね。ほら、捕まえてごらんなさい」

声は、ふたつ。

姿は、ひとつ。






01_kk.jpg
細かなビジューが施された純白のドレス。

そのAラインが収束する腰には擲弾と、小型のガラス筒と、抑圧されたコルセット。

細くやわらかいブロンドの隙間からは、ゴーグルに革で歪に接がれたマスクが見える。

優しげなレースで編まれたな日傘の柄には、マスケット銃の台尻。


アンバランスの極致を体現したような存在が、ジャングルの中ひとり、くるくると踊っている。




常夏に降る雪。朽ち果てた部族の痕跡。怪しく匂う、まだ見ぬ宝玉。
その匂いを嗅ぎつけた招かれざる客たちにより、安寧はみだされてゆく。

もはやこの島に普通は存在せず、常識は通用せず、静寂は意味を成さない。



02_狂った踊り ただし、異常で非常識な騒々しい客人には、それ相応のもてなしが待っている。

「あー、そこの女? 止まるネ」

ジェーンを呼び止める声。

新たな声の主もまた、女であった。



03_ユーホァ 黒いドレス、黒いまとめ髪に黒いマスク。
黒尽くめに映える吉祥の結び飾り。
子供の頭よりも大きな錘には金色の龍があしらわれている。


中華の女人、清の暗殺者。名をユーホァと言う。




04_立ち話 「あら? あなたみたいな人、あの船にいたかしら?」

「船? 知らない。 ワタシここではじめまして。アナタ、宝玉を盗みに来たひとり? そうは見えないケド」

ユーホァがジェーンの服に視線をやる。
ジャングルにも廃墟にも溶け込めない、その真っ白なウェディングドレスである。

その格好で何かを盗み出すのであれば、あまりにも目立ちすぎる。


「まあ! ナタリアの言ってたことは本当だったのね! とっても素敵! 皆もきっと喜ぶわ!」


屈託無く喜ぶジェーン。英国女王の宝玉を奪う気概は感じられない。

ユーホァは呆れたように双錘をくるくると回す。

「ホントは背後からアナタ殺すつもりだたケド。どう見てもそれ宝探しする格好ジャナイ。宝玉取るつもりないナラ見逃してあげる」




05_挑発 「ホラ、さっさと島から出ていくネ」

指令があろうとも、無駄な殺しはしない。今日上陸した者たちの元々の目的は島の地質調査だと聞いている。
調査も探検も不向きな目の前の異物は放っておいても何もできないだろう、と言う判断だ。


しかし、ユーホァの容赦をジェーンは違う形で捕らえていた。




「ころす? わたしを? ねえジェーン、この人、わたしを『ころす』って 」

「殺す? お前を? こいつがお前を殺すのか?」

「ええ、そう、わたしをころすって」


しとやかなジェスチャーをしていたジェーンの指が、わなわなと震え、硬く握り締められる。

その拳に籠められた意味は、明らかな敵意。

愛するものを、私(ジェーン)自身に害なすものを徹底的に排除する殺意だった。

腰に提げたガラス筒の先端をマスクに挿入する。側面には「OPIUM」の文字。

マスク内に供給された蒸気を一身に吸うと、ジェーンの視界はヂリヂリと明滅した。

急速に持ち上がる吐き気のような怒りが、喉から煙と共に噴き出した。





06_怒り心頭 「殺させない! お前をもう二度と! ジェーン(わ た し)をもう二度と!!!」


フルフェイスのマスクから顎がはみ出るほどの怒号と共に、ジェーンがドレスの裾を割り開く。

煌びやかな絹の合わせ目から無骨なクリノリンが展開し、鎌首をもたげる蛇のように二丁の機関銃が顔を出した。


「それがアンタの正体。面白いネ」

「ウオオオオオオオオオ! コロス! コロスモノハコロスゥゥゥゥ!」

「でも……阿片の強烈な匂い、それだけは許さナイ」


07_乱射 日傘をライフルめいて持ち替えたジェーンが、髪を振り乱しながら突進する。

一斉掃射。3つのマズルフラッシュがユーホァに向けて放たれる。



だが、ユーホァは既にそこには居ない。

最初の弾丸が空を斬り、地面を叩く前にユーホァはジェーンの真横にまで迫っていた。
あたかも神仙伝が如く地を縮めるように懐まで滑空したユーホァは、すれ違いざまにジェーンに双錘を叩きつける。
後頭部と腰椎へ互い違いに鉄球がめり込み、限界を超え砕かれる。



最終的にジェーンの体は、振り回された人形のように軽々と宙を舞い、


08_無双乱舞


ユーホァの後ろに落ちた。











09_死体 破壊されたジェーンの頭部からマスクが剥がれ落ち、無精髭が覗いている。
マスクに刺さったガラス筒の"OPIUM"とは、阿片である。


英国はインドで栽培し製造した阿片を清に密輸し、組織的に販売して収益を得ていた。
阿片を禁じていた清との間で戦争となったが、勝利した英国は清に耐え難い不平等条約を結んだ形で終結させた。



「アンタが死んだ女をいつまでも想うは勝手。ダケド、牙向く相手、間違えたようネ」



阿片の効用は使用者に抗えぬ恍惚をもたらすが、常用はやがて精神錯乱を伴う。










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第7話


本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります






000_自己紹介


ムーチョグスト!こんな辺鄙なブロゴを読んでる君の名前を教えてよ!


身長は?体重は?好きな体位は?

あ、自己紹介がまだだったね。俺サマはエル・カクタス!

君と同じくクソ辺鄙な島で七面鳥を撃ちにきたガンマンさ!


この島にはコヨーテもキツネもいないけど、とっても美味しいターキーが狩れるって聞いてさ!
もう俺サマ ギンッギンなわけ!

おっとそろそろ獲物の登場だ。

アミーゴスはそこで事の一部始終を見守っていてくれ!では5分後にまた会おう!チャーオ!





































00_ロゴ

―本隊上陸 2ヶ月前―


島の中心に向かって深くなる雪は、もはやここに至りブーツの足首を隠すほどにまでなっていた。

ナタリアは林を迂回したところで坑道を見つけた。

昔はここも何かを採掘していたのだろうか。単にジャングルを安全に通り抜けるために作られた地下通路なのだろうか。

上陸してから今まで雪は一度も降っていないが、この寒さである。

何度も降ることがあれば、この坑道すら埋もれてしまうのではないか。


かつて繁栄を極めていたであろう密林を、存在していたであろう僅かな文明の痕跡を、雪は静かに白く塗りつぶしていく。

本能的か、計算の果てか。どちらにせよ、ナタリアは雪を避けるように坑道を選んだ。


プロイツ帝国で産まれ、大公国で育ったナタリアである。寒さにも、雪を走ることにもめげることはなかったのだが

ここに積もっている雪は、踏みしめるたびに精神力が削り取られていくようだった。

もうすぐで坑道を抜ける。トンネルに採掘するための横道が無かったと考えると、単にこれは通路なのだろう。

一刻も早く宝玉を見つけて、この不気味な雪の島から離脱したい。


「そういう前フリもうみんな聞き飽きてると思うんだよねー!!!!」




01_オッラー

トンネルを抜けて、目に飛び込んだのは、緑の仮面を被った男だった。

粗雑なソンブレロに鋳鉄でできた三連銃の意匠。赤いマントに緑の仮面。その奥に無精ひげ。
メキシコ人の様な出で立ちで、手には何らかの改造が施されたマチェーテを携えている。

「やっとバトル回になったと思ったら前日譚なんて、構成メチャクチャ過ぎない? アミーゴスついていけてる?」

その言葉はナタリアには向けられていない。どこか明後日の方向に対して叫び続けている。だが、自分の存在について言及しているようだ。

「そっか君には自己紹介まだだったよねー!」
不意に首が真反対であるこちらを向き、あとから体が反転した。





02_エルカクタスだよ
「iHola! 俺サマ、エル・カクタス!元気かいセニョーラ!南の島での冒険、実にご苦労サッマ!」

エル・カクタスと名乗るその男は、馴れ馴れしくナタリアの肩を叩いた。
思わず飛びずさるナタリア。


「でもー?島の中心に向かっている通路なら、その先に何か素敵なモノでもあると思ったー!? 残念ハズレー!!」

さっきまで虚空に向かって叫んでいた男が、今この瞬間、坑道の軒先に腰掛けて嗤っている。

「いや、大当たりかな?俺サマと出会えた君は実にスエルテなセニョーラだ! なにせ俺サマは――」

いったいどうやって近づいた?
その上マチェーテを持っている状態で肩を叩かれた。もし相手に攻撃する意思があれば背後から容易に切り殺されていただろう。

「ルズデラモンタニャ……コヒヌールの在り処を知っているからネ!」

ナタリアは即座に腰の鎌を抜き、分銅を構えた。





03_危ない危ない
「あなた……なぜそれを!」

「それを?それをなんだい?『なぜそれを知っている』かい?察しが悪いなあセニョーラ」

呆れたように手をひらつかせ、ナタリアを嗜めるエルカクタス。

「宝探しに無人島に来て、先客が居たんなら、それはもう先回りされたってことサ!」

瞬間、ナタリアから分銅が放たれる。サイドスローで投げられたそれは、挑発的に掲げられたエルカクタスの右腕に絡みついた。








04_絡め取り
「だったら話は早いわ……。あなたが持っているのか、もうこの島に無いのか、洗いざらい教えてもらうだけ!」

「イッホレ! なかなかやるじゃないか!」
坑道の軒に立つエルカクタスを引き倒し、鎖で捕縛する算段のナタリア。

しかし、いくら体重をかけても、まるで坑道の柱そのものと綱引きをしているかの如くエルカクタスはびくともしない。

「デモォー? でもでも生者の攻撃は俺サマには効かないんだよなー!?」

鎖が食い込んだ右手を、ナタリアごと引き上げるエルカクタス。

"綱引き"の主導権はいとも簡単にくつがえり、ナタリアは不均衡なシーソーのように、無抵抗で釣り上げられてしまう。


















05_引き寄せ
「そしてここは無人島……無人とはすなわち無法であることと同じ!
 甘い蜜に誘われてこんなトコまで来ちゃった愚か者の声は、殺されようと!犯されようと!誰にも届かないってワケさ!」

無様に釣り上げられたナタリアの顎に、鎖をかけるエルカクタス。

手で振りほどくよりも速く、鎖を首の後ろでクロスする。ナタリアの全体重が自らの頚椎に架かった。















06_ハング
「グッ……ググゥ……ッ!!」

体をよじる。両脚が空を蹴る。だが、自身を支えられる物はどこにもない。

視界が明滅し、意識が急速に混濁する。
――ああ、こんなことなら、真面目に働いて、プロイツに残した弟に、もう一度会いたかった――
















07_絶命
エルカクタスがヨーヨーで遊ぶかのように鎖を上下に揺さぶると、3回目でゴギリ、と鈍い音がした。

「モノローグに突っ込むのは野暮かもしれないけど、大丈夫!死者の日にまた会えるさ!」



















08_連れ込み
さあ!どうだったかな俺サマの華麗なる鹿討ちは!? あれ、七面鳥だったっけ?

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じゃ! 俺サマは、ちょっと用があるから!
狩った得物が、弛緩してるうちに、ヤること、あるからさ!(カチャカチャ)



その、なんだ、ブロゴを閉じろ!!!


アディオス!







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第6話

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00_ロゴ  


―本隊上陸 2ヶ月前―


林を走る体が重いのは、ぬかるんだ地面のせいでも、常夏の島に似つかわしくない寒さのせいでもなかった。

なにか、合わない酒を飲まされたような気分の悪さがヴァイスを蝕んでいる。

財産を守るため、かつての家主が仕掛けた罠や毒が遺跡に残っていることは少なくない。

だが、そんな死者の最後の抗いを切り抜け、すべてをつまびらかにするのがトレジャーハンターである。


そうであるはずのヴァイスを襲う、どこまで走っても収まらないこの体の内側がかき回されているような倦怠感は毒によるものではないことは確かだ。

原因不明の体調不良か、焦燥感か。好事家が跳び付く依頼品を廃墟や遺跡から何度も盗み出してきたベテランが、ルーキーのような弱音を吐く。
「さっさとおさらばしたいぜ……」

01_ヴァイス ましてや今回、自分から仕掛けた勝負がある。
一番に女王のダイヤを掴み取り、島を脱出する必要がある。

勝者となれば、一生遊んで暮らしても使い切れない富が手に入る。



ヴァイスは幾重にもかさなる蔓と藪を抜けてやっと開けた場所に着いた。

だが、そこには既に先客が待っていた。


02_バードン 異形の者。

アルスターコート、傾斜のついたブリムのトップハット、黒革の手袋、モノクル、杖。
紳士の黒に身を包んだ『圧力計』が、こちらを向いた。


「おや、おひとりですか?」


03_邂逅 「この島の地図を持っている者は必ずここにたどり着く。あの男の言っていたとおりでしたね」

圧力計は静かにうなずくと、ヴァイスのほうに歩き出した。

「大勢から選ぶつもりでここで待っていました……ひとりなのは残念ですが、ふむ。なかなか大当たりでは?」


04_挨拶 「申し後れました。私はバードン。学者をしております」

バードンと名乗るその男は、ヴァイスに向かってうやうやしく頭を下げた。

「貴方と目的は違いますが、私も探しものをしていましてね?」
品定めをするようにあちこちを見回すバードン。
ヴァイスはあまりのことに動けずにいる。

05_品定め 「身長 体重 骨密度申し分なし。心拍数の上昇を確認。落ち着いてから測れば良いか」

言葉を発する、視線も分からない異形の頭。
ましてや言っていることの意味が全く分からず、ヴァイスは独り言をさえぎる事もできない。

「しかし、ヴァイス(欠陥)とはいくぶん不安が残りますね。どこが悪いのでしょう。 関節? 内臓?」

口に出してもいない名を呼ばれた。
一方的に情報を知っている、得体の知れない格好の男。

同業者か、敵か。いずれにせよ秘宝探しを妨害されることだけは間違いない。







06_とびかかり 両腕を振り上げて、手甲に隠れたジャマダハルがその刃を露出させる。

「なんだ、頭か」

ヴァイスはバードンに向かって飛び掛った。


07_お勉強 「では、お勉強の時間だ」

ヴァイスのジャマダハルが、バードンがそれを避けるより速く鳩尾を深く突き刺す。


否、バードンがそれを許したのだ。

真芯を捕らえ、伸びきる左手。だが、その腕に肉を突いた感触がない。

バードンの体はヴァイスの左腕と重なりながら、そのままぬらりと右にスライドした。

「な……!?」

08_杖クイ 「何が斬れましたか?」


バードンがジャマダハルに杖を沿え、雲の巣をはらうように軽やかに去なした。
瞬間、馬車に追突されたかのように左腕が吹き飛ぶ。

体勢を崩しながらも持ち堪えるヴァイス。だが、もう二撃目を突く握力がない。


「素晴らしい! 折れませんでしたね? 耐久試験も合格だ」


09_ネックハング 「墓荒らしをしているのなら、墓守の怖さを知らぬわけもあるまい?」

モーメントを無視した体勢からの、無造作なネックハング。
ワイングラスをランプにかざすようにヴァイスの長身を持ち上げる。

「顔」と思われる部分の中央についた針がわずかに振れるたび、万力のような強さで喉元を締め上げられてゆく。


10_高い高い 「宝を守っているのも……っ、この毒も……、おまえなのかっ…っ!」

ヴァイスは掴み上げた腕に何度も刃を突き刺してみるが、バードンは意を介さず、語りかける。

「毒? 毒は知らんな。だが……ああ、若きレイダーよ。確かにある。ここには宝が、英国女王のダイヤ、コヒヌールが」

漆黒のアルスターコートの腕が風船細工めいてパンパンに膨らんでゆく。

「だが、それに群がる君たちもまた、私にとっては喉から手が出るほど欲しいんだ」

足は地面を離れ、高く高く、強く強く締め上げられる。

「私は見つけたぞ!」

ヴァイスの黒目が瞼の裏に隠れ、抵抗を止めた両腕がだらしなく垂れ下がった。

「秘宝を追い求め! 秘境に挑むことのできる! 野心に溢れた健康な肉体を!!」

11_絶命 バードンはヴァイスに顔を近づけると、自らの圧力弁を開放した。

体中から気化したグリセリンが噴き出し、靄がヴァイスを飲み込んでゆく。
張力を失ったアルスターコートが、しぼみながらゆっくりと横たわっていった。


12_のっとり 立ち込めている靄の中から、膝まづいたシルエットとが現れ、咳払いが聞こえた。

それはすっくと立ち上がると、地面に落ちていたコートを拾い上げた。













13_のっとり完了 「素晴らしい」

異形の男は、林の奥に姿を消した。









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第5話

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00_ロゴ

―本隊上陸 2ヶ月前―


「うぅ・・・苦手だこの寒さ・・・」
雪柳は走って緩んだケープをいま一度締めなおした。
森の生き物は突然の雪に怯え、足跡すら見かけない。

01_木の上 木の上から、島を見回してみる。獣人の身には容易いことだ。

風に匂いは無く、木々は急激な降雪に色を失いつつあった。


そしてこの雪は、島の中央に向かってますます深くなっていくようだ。


故郷に降る雪とはまるで違う。体感の寒さだけでなく、妙な「寒気」が産毛を逆撫でする。
そしてそれ以上に、何か嫌な予感を雪柳は確かに感じ取っていた。


「――動くな」
木からするすると降りたところで、背後から急に野太い声がした。

02_発見 「私はヴァルター・フォン・クロンベルク。帝国軍人である。命令により排除する」
ヴァルター、そう名乗る男が剣を構えた時には、雪柳はその身を反転させ大きく飛びずさった。

「疾いな。だがこちらは名乗っている。そちらの名と目的を」
雪柳はヴァルターの言葉を待たず襲い掛かった。

ガギャリとガントレットが軋み刃こぼれが小さく発火する。その閃光が消えるより速く二人は二刃、三刃と斬り結んだ。
雪柳の眼光が糸を引く。仰け反った体躯をばねにしてもう一撃を加える。

03_戦闘 戦闘には自信があった。雪柳は自警団でも一番のミリティア・ガントレット使いだった。
カミソリの如き先端のクローは切れ味を失いやすい。
しかしその度にガントレット後部のバルブが自動的に開き、こぼれた刃を修復することで分厚い毛皮を、太い骨をガーゼのように裂いていく。


しかし全ての攻撃は、ヴァルターの両腕とそこから伸びる無骨なロングソードによって去なされ、スケイルアーマーにすら届かない。

(肉体に傷がつけられないなら、数で圧倒して逃げよう・・・・!)




斬撃が三十を越した後、先に体勢を崩したのは雪柳のほうだった。

04_逡巡 すかさずマウントを取るヴァルター。逆手に持った剣が喉元にむけ振りかぶられた。


「……っ」


一瞬の逡巡。雪柳は機を逃さなかった。

「ぐるるるああああああああああああ!」


ガントレットの廃熱を顔に押し当て、肘でヴァルターを突き飛ばした。

05_脱兎 「待てっ!……いや……」
ヴァルターは突き出した手を下ろすと、その場に立ち尽くした。




バーグリヒト奪取計画。

祖国の言語で【山の光】と呼ばれた幻の宝玉。

鉱石採掘場で偶然発見された大粒のダイヤと思われていたそれは、ただの宝石ではなかった。

・・・・・
核電金剛石――そんな小さな石ひとつに熱を上げて、帝国は今再び略奪者にならんとしている。



騎士道とは守るべき者のために戦うはずではないのか。

宝玉の奪取と解析は帝国の科学力を飛躍させるといわれているが、その斥候という命のために歳若い獣人を殺すことがあって良いのか。それはもう蛮勇ではないのか。

プロイツはもはや元の大公国のみならず、世界そのものから乖離しはじめている。




06_祈り 優秀な戦果を挙げた名誉ある血族にのみ許される、紅の十字兜。

それは神の受難と国の勝利を顔に刻まれたことを意味している。


「主よ、祖国よ。貴方は邪まな者の悪意を砕き正義を守るために剣を使うのを、私にお許しになった。
どうかこの下僕のこころを善に向けさせ、いかなる剣も、不正に他人を傷つけるためには決して使わせないように導きたまえ」

ヴァルターはゆっくりと、無骨な剣を十字に相対させて祈った。











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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ
しめ鯖