第2回スチームパンク武装撮影会 第17話『傀儡-弾-』

『注意』
この記事は、第2回武装スチームパンク撮影会の記事です。
ストーリーになっており、フィクションの内容となっております。ご了承ください。
写真撮影は(
ザン・ウー様)(しめ鯖様)(せーゆ様)にして頂きました。ありがとうございます。
※一部ツイッター上の物も使わせていただきます。

前回のお話
━━領主の館・通路━━━


 シャルロッテは領主のもとへと急いでいた。彼女は命令に従う軍人であるが、今の彼女を動かすものは司令部の命令ではなく、蒸気軍実験部隊長である淀川シオンの信念である。
 シャルロッテは淀川の事を軍人としてだけではなく、人として持つ矜持に特別な敬愛を抱いている。それは、かつて、自らを拾って育ててくれた事に恩義を感じていたからだ。 一方で、淀川班と共に送り込まれた蒸気軍実験部隊メッサー班の隊員の一人にも尊敬している軍人がいた。そのメッサー班ともしばらく連絡が途絶えていた。

 「!」

 前方でコートを着た男が蠢いている。顔がよく見えない。ライフルを向け、意識を前方に向けた。肩に力を入れるシャルロッテに、声が送られた。

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 「おいおい、その反射速度は認めるが、上官に銃を向けちゃいけねえだろ・・・一等兵よ」














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バッ

 前方の男がコートを脱ぎ去るとそこからは全身鎧に包まれ、革製の特徴的な兜を身に付けた男が現れた。そして男の腕にはシャルロッテと同じ腕章がつけられていた。

「あ、貴方は・・・・・・バレット軍曹!」

 シャルロッテは銃を下ろし、瞬時に敬礼をした。面識はなかったが、階級腕章と、弾丸が備え付けられた特徴的な兜を持つのは蒸気軍の中でも、一人だけだ。
 バレットトリガー・・・とある戦いにおいて、全身が傷付きながらも仲間を救ったという英雄的な軍人であった。そして、粗野ではあるが、義に厚く高潔な軍人だと聞いていた。

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「ご無事でありましたか軍曹」
「あぁ。まあな。淀川班も無事みたいで、良かったぜ」
「高名なバレット軍曹にお目にかかれて光栄であります!」
「まぁそんなに世辞るな。やれる小遣いはねえぞ」

 初めて会う憧れの上官。軍人であれば胸が高鳴るはずに決まっている。一等兵であるシャルロッテからすれば、軍曹のバレットは上官であった。噂によれば、バレット軍曹は戦場での負傷の後は軍の機密計画に加わったと聞いていた。・・・確か、負傷兵再派遣計画(recycle troopers project)だったと・・・。それがメッサー班の隊員として参加すると聞いていて、会うことを心待にしていたのだ。






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「・・シャルロッテ一等兵だったか。他の淀川班の隊員はどうした?」
「それが・・・二名は戦死。淀川隊長は・・・個人の裁量で動いております」

 シャルロッテからすれば、淀川班の造反を伝えるのは憚られた。僅かに表情を曇らしながら、目線を逸らした。 バレットはそれ以上追及せず、シャルロッテの背後に回りこんだ。











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「バレット軍曹。ところで、他のメッサー班の隊員はどこへ?」
「ああ、そいつはな・・・」
 シャルロッテの背後で蒸気式ソーが音を上げる。


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ザザッ

「俺が皆殺しにしてやったよ!!」
「!?」

 僅差のタイミングで、シャルロッテは、バレットのソーを避ける。尊敬する相手からの、狂気の攻撃に、思わず叫んだ。






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「・・・!?どういうつもりです、軍曹!」
「フン、もう・・・作戦も仲間も必要ないのよ!俺様だけが生き残ればいいんだよぉ!」
「くっ!」

 正気を失っていたバレットの攻撃を交わすと、シャルロッテは銃を構えて、弾を放つ。しかしバレットのスチームソーが弾を弾くと、瞬時に、シャルロッテの眼前に迫り来る。その威圧感は尋常ではない。

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「貴方を尊敬していました!・・・何故こんな」
「何度も死地を経験して悟ったのよ・・・!!最後に信じられるのは自分自身と金だけだってな!・・・今回入の作戦に加わった軍人達は全員事故死・・・お前らを消せば、反政府勢力から、たんまりと金を貰えるのよ!」

 バレットは豹変していた。己の体と心が傷つき・・・。代わりに得た鎧と兜は、人間の心を失わせ、破壊者へと成り下がっていた。そこに、高潔な軍人の姿はなかった。
 それを悟ったシャルロッテは、すかさず、バレットの足を狙い、蹴り払う。シャルロッテは思い出していた。負傷兵の肉体強化の為に造られた鎧があると。それは、強大な力と引き換えに、戦闘への恐怖心、人の尊厳を失っていく、恐るべき兵器だということを。・・・バレットを包んでいる鎧が・・・恐らくそれだ。

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「やるな・・・!」
「軍曹・・・貴方はその鎧と兜に囚われている・・・!あたしが救います!貴方は・・・仲間を誰よりも思う高潔な軍人だ!」
「小娘が・・・何を言ってやがる!!」








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「貴様に分かるのか!救いたくても救えぬ兵士達が死んでいき・・・己が狂っていく様を!・・・俺はこの鎧を手にいれ、全てを悟ったのだ。恐怖も苦しみも無い!自分の為だけに生きていくんだよ!」

「それでも・・・その鎧は・・・あたしが壊す!貴方の誇りの為にも!!」
「・・・・・・・・・やってみろぉ!!!」








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 二人の銃口は、互いに向けられていた。反応速度は互角だった。








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「仲間など要らぬ!力は己自身の戦闘力で決まるんだ!!」


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「違う・・・!本当の力は・・・仲間と共に生み出すものなんだ!!」

 シャルロッテの脳裏には・・・淀川・・・・凪橋・・・人造天使・・・・・・仲間達の顔が浮かんだ。その時、自身の体が軽くなった気がした。二人は再度、銃口を向けあった。














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「うおおお!!」
「うおおお!!」


 二つの銃声が、薄暗い通路に響いた。二つの薬莢が、床に落ち・・・乾いた音がした。



















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 その刹那・・・地には、バレットが座り込んでいた。体からは血が流れていた。シャルロッテの放った銃弾が、勝負を決めたのであった。しかし、シャルロッテの顔は浮かなかった。それは、敬愛する相手に勝利したことへの戸惑いではなく、決着の瞬間、バレットの動きが一瞬止まったことであった。


「バレット軍曹・・・貴方は・・・・・・最後の最後で、鎧の魔力に打ち勝ったのでは・・・」
「・・・は・・・・・・ふん、てめえの銃さばきが早かっただけだ・・・・・・」

 しかし、シャルロッテは確信していた。バレットは最後の最後で・・・自らの忌まわしき鎧の力に勝ち、自らの意思で、引き金を引くのを遅らせたのだと。彼は、最後で、軍人としての矜持を取り戻し、罪を受けるため、甘んじて弾を受けたのではないか・・・。










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「くだら・・・ねぇ・・・さっさと行かねぇか・・・他にいくところがあるんだろ・・・」
「軍曹・・・・・・・・・失礼します・・・・・・・・・」

 シャルロッテは、涙目にその場を立ち去った。領主を探して、止めなければ。今は、軍人としてではなく・・・自らを拾ってくれた淀川の力になりたい。シャルロッテは、敬愛する一人の軍人を失った。しかし、同時に・・・一回り大きくなったのである。











「・・・・・・仲間か・・・・・・・・・ふん」











 少し逞しくなった、女性兵士の背中を見つめながら、バレットは小さく呟いた。










━━━━━━━

ラスティパペット大活躍回四連続でした!
さあ、物語は最終回へと近づきました!
最後まで、お付き合いください!

写真に写ってはいても、出番がない方は、今後もしっかり出番を作っていきたいと思います。

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第2回スチームパンク武装撮影会 第16話『傀儡-操-』

『注意』
この記事は、第2回武装スチームパンク撮影会の記事です。
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ザン・ウー様)(しめ鯖様)(せーゆ様)にして頂きました。ありがとうございます。
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前回のお話

━━地下室━━━



 領主を探し回ったモリブデンだったが、気になる場所を見つけた。薄暗い地下へと続く階段の先に、異様な雰囲気の扉を見つけたのだ。
 人の気配を感じない扉を警戒をしながら少しずつ開いていく。
 モリブデンが、その部屋に入った時、不思議な空気を瞬時に感じ取った。それは獣人ゆえの鋭い感覚なのか、それとも、人ではない者の力を感じ取ったからか。





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 冷たい金属の扉の先には、黒いコートに身を包んだ男が腰かけていた。男は身動ぎせずに口を開いた。

「ヤァ・・・お客サンかネ?」
「・・・あ、貴方は?」

 薄暗い部屋全体には無数の計器や機械が、壁を這うように敷き詰められている。まるで何かの実験室のようであった。椅子に座る大柄の男の腕には、可憐な少女の人形が、同じように腰かけていた。
  ただの人形のようだが・・・その瞳は不思議な耀きを持っていた。

 「ワタシはBD。・・・本名はバルツァー=ディートハルト・・・ま、BDでいいヨ。・・・この屋敷に召し抱えられている呪術人形使いだヨ」
「じゅじゅ・・・?」




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 聞き慣れない言葉にモリブデンは困惑したが、BDから殺気や闘志のようなものは感じられず、警戒は解いていた。椅子の機械音を鳴らしながら、身を乗り出すBDは堪えるように言葉を続けた。

「しかシ、ここの領主も嬉しいプレゼントをくれるネ」

  口元は大きな仮面に覆われており、表情を窺うことはできないが、その声は歓喜に満ち溢れていた。モリブデンは言い知れない嫌なモノを直感的に感じ取った。








 「鮮度の良い獣人はナカナカ手に入らないからねェ」

 その刹那、BDから強烈な殺気と死臭が放たれる。BDのモリブデンに向ける視線は、同じ生き物に対してのものではなかった。実験動物、家畜といったものに対する目であった。
 モリブデンが反射的に銃を構え、銃口を向けようとした。







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 ガキンッ

 しかし、銃身に強い力が加わる。気づけば、BDの腕にいた人形が動き出し、腕に備えたスピアーでモリブデンの銃を押さえ付けていた。

「なっ・・・!」
「このコは、Bd3 式自動呪術人形プロトタイプ・セレニア・・・つまり私の愛しい娘だヨ」
「あ、貴方は一体何者なんですか・・・!」
 






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「サキホドもいったように、ただの呪術人形遣いだヨ。ココデ、死者の魂を用いての呪術人形を作っているんだよ」
「何・・・!?」



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「この娘は、降霊術を用いて、魂を宿しているンだよ・・・まだカンペキじゃないケドネ・・・。君のような獣人の魂ならば、さゾ、強い力を持つ呪術人形がツクレそうだヨ」

 狂気に染まったBDの熱弁に、モリブデンは動揺を隠せなかったが、距離をとりながら考える。あの人形は見た目よりもスピードもパワーも兼ね備えている。

「君ならあの、CARDのヘビ女よりも、きっとイイ実験台になってくれるヨ」

 モリブデンはその言葉に目を見開いた。








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「ヘビ女って・・・まさかあの?」
「オヤ知っているのかイ?あのヘビ女は、チュウトハンパな獣人でネ。使い物にナラないので、精神安定剤と称して、私の麻薬を注入してアゲたのだヨ。力と引き換えに、正気を失っていク、ステキな薬だよ」

 モリブデンは目を細める。心の中で怒りがこみあげてくるが、心は意外と・・・落ち着いていた。彼女から溢れていた毒気、狂気が天性のものではないと感じていたが・・・。

「あイツは確かドコカの見世物小屋で拾ったハズだ・・・良い呪術人形の魂になるかと思ったんダケドね・・・だめだネ、弱り切った魂ジャ、ツカイモノにならない。私の麻薬で、番犬くらいにハなったンダロウけどね・・・」






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「許さないぞ・・・お前は・・・人の命を何だと思っているんだ・・・!!」

 再び銃口を構えたモリブデン。こんなヤツの為にあの獣人の娘は・・・マチルダさんは・・・そして、ヒヨコは・・・!銃を突きつけられた、BDは大きく息をつき応えた。
















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「他人の命・・・?キマッテルダロ、私の可愛い人形の、生け贄ダヨ!!」

 













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 再び、人形が動き出し、槍を構えた。モリブデンの心は揺れた。この人形にも、誰かの魂が入っているのか・・・?そう思えば、自然と銃を握る力が抜けていく。僕が憎いのは、この人形の女の娘じゃない。この奥にいる、命を弄ぶ奴だ!


 その時、人形・・・セレニアは、僅かに、その可憐な表情をモリブデンに向けた。










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「え・・・?」

 ゆっくりと槍を引くセレニア。モリブデンも自然と腕が止まっていた。そして、セレニアは静かにモリブデンに微笑んだ。微笑むはずはないのだ。BDからは、セレニアの顔は見えない。

しかし・・・確かにその瞬間だけは、セレニアはモリブデンに微笑んだ。


「君、優シインダネ・・・・・・アリガトウ」



 モリブデンの耳には、確かに聞こえたのだ。
 そしてその直後、セレニアは動きを止めた。













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 「ソソンナ!馬鹿ナ!な、何故動かなイ!?何故ダァーッ!!!!セレニアちゃーーーん!!」

 予想外の出来事にBDは叫び声を上げる。主人に従わぬ人形にBDは悲しさと怒りの混ざり合った表情を浮かべた。モリブデンはセレニアを見つめ、小さく笑んだ。そして、強い瞳でBDを睨み付けた。









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「もうお前の負けだ・・・諦めろ」
「ヒィッ・・・命ダケハ・・・タ、タスケテクレーッ!」




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「領主はどこにいるんだ・・・!」
「ヤヤツラハ・・・コノマウエノ部屋にいルヨ・・・!ほ、本当だ・・・。ダカラ命はたすけテ・・・」

 必死に命乞いをするBDに、モリブデンは更に銃口を突きつけた。


「そんなに大切な命を・・・・・・お前は弄んでいるんだ・・・!罪を償え!」
「ヒィィィィィィ」

 モリブデンは・・・BDの顔に照準を合わせ・・・引き金を引いた。






ドンッ















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 勢い良く放たれた弾は、BDの顔のすぐ横を掠め、後ろの計器を破壊した。
 BDはマスクから泡を吹き、気を失った。













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「これでいいんだよね・・・」


 モリブデンは、気絶したBDの傍に転がるセレニアの表情を見た。
 セレニアの顔は・・・笑っているように見えた。















━━━━━━━

 まだまだラスティパペット活躍回が続きます!(?)
 お楽しみに!

写真に写ってはいても、出番がない方は、今後もしっかり出番を作っていきたいと思います。

第2回スチームパンク武装撮影会 第15話『傀儡-梟-』

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この記事は、第2回武装スチームパンク撮影会の記事です。
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前回のお話

━━領主の館・広間━━━

  ゴットヘルフは、ヒヨコとマチルダの亡骸を広間の隅へ運んだ。二人の表情は穏やかだった。しかし、それを見下ろす老人の表情は曇っていた。悲しみに塗れた口から言葉が漏れる。

 「儂は、何の為に戦っておったんじゃったかのう」

  ヒヨコの傍らに腰を落とすと、消え入りそうな声で呟いた。領主を探しに行ったモリブデンを見送り、静まり返った広間に、空虚な時間が流れた。 自らの過去の罪に苦しめられ、孫を失い。自らの・・・そう、戦ってきた生き様に意味はあったのか。床に転がっていた銃を手に取り、銃口を自らに向けた。 最強の傭兵が、自ら命を断つのか・・・。

「このまま、皆がいるところに逝くのも悪くないかの・・・」

 ゴットヘルフは、銃の引き金に指をかけ、大きくため息をついた。












「・・・まさかあの”バーグラー”が、人の死にそこまで感傷的だったとはな・・・」









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 静寂に投じるように言葉が響いた方向に目を向けると、そこには航空士の装いの黒い仮面の男がいた。気配を全く感じさせなかった男に、ゴットヘルフは反射的に銃を構えた。 一筋の汗が頬をつたう。



 こいつは、強い。




「お前さんは誰じゃ」
「その質問は我々の世界では、無意味なはずだが?」








 ゴットヘルフはそんな事は承知していた。しかし、相手の返答の声質で、性別・年齢・体力の状態を把握することはできる。・・・年齢は若くはないが、壮年とまではまだいかない。落ち着きがある声のトーン。気配の消し方といいおそらくは、隠密が得意な、破壊工作員、暗殺者か。自分が狙いならわざわざ声をかけるはずもない。音も無く殺しにくるはずだ。屋敷の破壊でも同様であろう。手を下さずにこのまま戦いが続けば、ここの館はもう落ちる。標的は建物でもない。



つまり



 「お前さんは誰かを探しにここにきたのかな?」





 「これは驚いた」

 少しの間のあと、男は小さく呟いた。同時に両手から刃物を取り出し、駆け出した。



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 「目当ての男はいなかったが・・・お前の首は、良い土産になりそうだ!」

 迫り来る男に、対して、即座に柱に身を隠すゴットヘルフ。先程の戦いでのダメージもあった。長期戦は不利だ。一撃で決めねば。素早く弾を装填するが、相手の男はすぐ傍まで迫っていた。




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「お前さんのような男が、目的以外の事をするとはな」
「弱っている強者を殺す。これが合理的でないと?」

 不必要な問答をするが、二人の距離は間違いなく縮まっていく。
 あと少しという時、ゴットヘルフは柱から飛び出し、銃を構え、引き金を引く。






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「悪いが、お前さんの相手をしている場合じゃないんじゃよ!」

 発射された、弾は確実に男を捕らえた・・・はずだった。しかし、実際には弾が当たらず、ゴットヘルフの眼前へと刃が迫る。咄嗟に杖を手に取り、前面に構えた。それと同時に、刃が杖を挟み込む。


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「ここまでだな、”バーグラー”・・・!!」
「・・・・・・一つ教えておいてやろう・・・・・・・・・歴戦の爺を甘くみないことじゃ!」








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ガコン!



 杖は突然、三つの節に分かれ、男の刃を押し返す。



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「!!・・・死ね・・・ッ!!」

 距離を取った男は、再び殺意とともに刃を繰り出す。
 しかし、ゴットヘルフの目つきは、さきほどのものとは豹変していた。それは、戦いに疲れ、老いさばらえた哀れな男ではなく、戦いに活路を見出した、戦士の瞳だ。





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ガシッ!


「!!」

杖で男の手首を挟みこむと、そのまま渾身の力を加える。男から刃物が落ちるのを確認すると、懐から小銃を握り締め、銃口を向ける。その動きに一切の無駄も、躊躇もない。ゴットヘルフには、戦いへの迷いは消えた。消えていった者達の為にも、絶対に負けられないのだ。負けるわけには・・・いかない!



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ダンッ!

 男は寸でのところで弾を避けた。バーグラーの凄まじさに、男も即座に刃物を横払いにする。本気でやらねば、この老人に殺される。



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「ええいっ!!死ね!爺!!」

 闇に閃く白刃を避けると、ゴットヘルフは床へと転がる。
 気づけば、手には先ほどの銃が握られていた。
 ここで死ぬわけにはいかない。














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「・・・・・・うおおおおっ!!」


 咆哮と共に、銃口の引き金を引く。
 引き金は軽かった。まるで、二人の力で引いているような・・・。












「世話が焼ける爺さんだぜ・・・全くよ」














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 薬莢がはじき出され、同時に飛び出した銃弾は間違いなく、男の肩を貫いた。致命傷ではないが、軽い傷でもない。男はよろめき、その場から立ち去ろうとする。ゴットヘルフは追う気にはならなかった。勝負は既についていたからだ。

「・・・流石は伝説の傭兵。・・・・・・・・・次は殺す」

 マスクの奥から、痛みを堪える声が響き、男は暗闇へと消えていく。


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「すまんな・・・ヒヨコ・・・やはり・・・儂はもう少しやらねばならぬようじゃ・・・

 ゆっくりと立ち上がると、全身に痛みが走る。しかし、ここで他の連中を待つわけにもいかない。自らの手で、決着をつけなくてはならない。ゴットヘルフは、少しずつだが、確実に前へと進んだ。領主の部屋を目指し・・・・・・全てを終わらせる為に。

━━領主の間━━━



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「ブラザー様。このままでは危うございます。・・・あの御方の力をお借りしては・・・?」
「ん・・・・・・そうか、あの人形遣いか!そうだ、その手があったわ!」

 シトリーの甘い言葉に、ビッグブラザーの目は見開く。この屋敷には長年仕えている魔術師がいた。ヤツの力を借りれば・・・!
 屋敷の薄暗い地下から、怪しげな笑い声が響いてくるようであった。



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 まだまだラスティパペット活躍回が続きます!(?)
 お楽しみに!

写真に写ってはいても、出番がない方は、今後もしっかり出番を作っていきたいと思います。

第2回スチームパンク武装撮影会 第14話『傀儡-腕-』

『注意』
この記事は、第2回武装スチームパンク撮影会の記事です。
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写真撮影は(
ザン・ウー様)(しめ鯖様)(せーゆ様)にして頂きました。ありがとうございます。
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前回のお話

━━領主の間━━━


 窓の外の様子は、がらりと変容していた。
 領主の館での戦いに呼応するように、市街から反乱が起き、火の手が上がっている。それを鎮圧する為に動き出す警備兵達。また、逐一報告にやってくる側近達の青ざめた表情に、ビッグブラザーも動揺を隠せずにいた。

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「ど、どうすればいいのだビッグブラザーよ」


 領主は表情は変えずにいたが、どうしていいか分からない様子で、目を細めた。領主には、この状態がどこまでの過酷な状況かを理解する見識はなかった。彼は何も知らずに、側近達の提案する遊びに興じていただけの飾りにすぎなかったからだ。ビッグブラザーは拳を震わせている。

「・・・ぐ・・・まさか傭兵達がやられ、蒸気軍の連中が裏切るとは!」





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「彼らには忠義という言葉がないのでしょうかねぇ。恥知らずもいいところだ。彼らの裏切りがなければ私の可愛い兵士達もやられずに済んだというのに」
「本当ですわ・・・おいたわしい深川卿・・・」
「本当ですわ・・・なげかわしい深川卿・・・」

 深川卿の言葉に反応するように女官であるシトリーとイブリンが慰める。しかしそれらの表情には、危機感を感じている様子がない。彼らには、まさか自分達が追い詰められているとは夢にも思っていないのである。あるいは、分かっているのだが興味はないのか・・・。





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「一部の群衆達が屋敷内へと入り込んでいるようです」
「ブラザーよ。それは困る。我輩の宝物庫は大丈夫であろうな?」
「警備兵の数を増やしては如何かな?」

 どこか他人事のようにも見える、領主達の会合の中、部屋には誰にも気づかれる事なく。一人の男がいた。彼は静かに、領主達の様子を見つめている。そして、ゆっくりと、手にした本をめくった。






━━宝物庫━━━





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「へへへ・・・こいつは良いタカラモンだ」

 騒音の中、宝物庫の中に蠢く影がいた。見たところまだ若い青年のようだが、腰には武器が提げられている。外見からは正規の兵隊ではないようだ。忍び足で周りの宝物を物色している。手には煌びやかな宝飾品を握り締めている。

「民兵に加わったふりしての火事場泥棒・・・たまらねえ!この金で俺の発明はさらに進化・・・」







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「う、うわっ何だお前!」

 一部始終を見ていた淀川が、ため息と共に一歩踏み出す。

「領主の間に行く途中にこんな鼠と出会うとはな。盗みの為に、民兵に加わりどさくさに紛れての盗賊行為か。感心しないな」





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「大人しく盗んだ物を置いて去れ、ここは戦火に包まれる。命を無駄にするな」

 銃とビックバンドを向ける淀川。大袈裟なモーションをしながら、若い男・・・マイケルは頭を下げる。

「す、すいません。出来心だったんだよぉ~・・・こ、こんな事はもうしない、ゆ、許してくれー」

 何度も頭を下げるマイケルに半ば呆れる淀川。こんな事をしている場合ではない、はやく領主達と決着を付けねば。




「はやく行け」
「あ、ありがとう!・・・お礼に・・・」






















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「こいつを喰らいやがれぇ!!ひゃっは!」

 頭を上げると同時に突き上げられた拳を、辛うじて避ける淀川。マイケルの腕に装着されている機械腕から、勢い良く蒸気が噴出す。

「チッ!惜しかった!俺のメカアーム『タガメ』を避けるとは。・・・なるほどあんた、軍の人間か!」

 淀川の腕の腕章を見ると、覆われていない口がニヤリを笑む。








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 メカアームとビックバンドの激しい衝撃音が、宝物庫に響く。

「・・・くっ・・・やるな」
「あんたの腕も良い感じだが、俺の発明品が世界一よ!へへへ!」

 グイグイと力を加えさせるマイケル。少しだけ、淀川が押される。淀川は、苦しそうな表情を浮かべ、絞るように、マイケルへと話しかける。

「・・・お前のような者が屋敷内に居るという事は、街はどうなっているんだ?」
「なんだ、あんた知らないのか?なんだが屋敷内で大規模な戦闘が起きて、街のあちこちでも反乱が起きてるのよ、この領主ももうおしまいだ!ま、俺には関係ないがね!」

 優勢な自身の状態に気分を良くし、口が軽くなるマイケル。
 全てを聞くと、淀川は小さく呟いた。ビックバンドに力が入る。



「そうか・・・民衆達が立ち上がったか・・・自分達の行為は無駄ではなかったんだな・・・」
「あ?」

「教えてくれて礼を言うぞ。だが私は領主のもとへ行かねばならん」
「い?」

「さっさと終わらせてもらう」













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ドガッッッ!!!
「うっ!!」









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バキッッッ!!!
「え”ぇ”ぇ”!!」








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グシャアァァッッ!!
「おぉぉぉおおッッ!!」


 



「すまんな」

 疲れた様子もなく、宝物庫から立ち去る淀川の背後には、バラバラになったメカアームと床にだらしなく崩れたマイケルの姿があった。





 



━━━━━━━

 今回からは、いよいよ最強の賞金稼ぎ集団ラスティパペット活躍回です!!
 よろしくお願いします!!



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第2回スチームパンク武装撮影会 第13話『毒香』

『注意』
この記事は、第2回武装スチームパンク撮影会の記事です。
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前回のお話

━━領主の館・広間━━
 

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 ヴァルジッラの気迫に押されたモリブデンの前に、鋭敏な動きでトーマが立ち塞がる。そんな妖艶な刺客に、モリブデンは狙いを定めずにいた。それは、動きだけではなく、跳躍とともに、場に広がる不思議な香の匂いが、獣人であるモリブデンの嗅覚を刺激している事も要因であった。

「ふふ・・・下賎な獣には、この香りは強すぎるかしら?」



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 貴族の私兵集団「CARD」の構成員であり、同時に優れた調香師であるトーマは勝機を読み取り、優艶な笑みを浮かべていた。実際、モリブデンの銃撃はかすりもせず、二人の距離は縮まっていた。トーマの槍斧は確実に、モリブデンを死地へと追い詰めている。トーマの
調香には自らを強化する特殊な効果と、相手の戦闘力を減退させる不思議な力があるのだ。

 トーマの放つ香の効果とは別に、モリブデンの視界に映る、床へと転がるヒヨコの亡骸が、彼の集中力を奪い取っていた。

「ヒヨコ・・・」

 浮かぶ涙が、モリブデンの視界も奪う。トーマは、そんな相手の柔弱の匂いを的確に嗅ぎ付け、渾身の突きを繰り出す。


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「これで終わりよ、薄汚い獣人の子犬ちゃん!」

 所詮、僕は獣人・・・。
 こんな強い相手に勝てるわけがない・・・。
 僕は人間の奴隷・・・叶うわけも無い夢だったんだ・・・。

 モリブデンから、戦意が消え、体から力が消えかけた時・・・。






「馬鹿野郎!諦めるんじゃねえぞ!!」








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「馬鹿なっ!?確かに仕留めたはず・・・!」

 トーマの突きは、モリブデンに僅かに届かず、刹那の沈黙が流れた。モリブデンの頭に、続いて再び声が響く。懐かしい・・・温かい声だ。







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「獣人や人間なんて相変わらずくだらねえ事言ってんじゃねえぞ!・・・お前は俺のダチだ!胸張っていけ!!」








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 モリブデンの脳裏に、確かに、ヒヨコの笑顔が浮かんだ。それと同時にモリブデンはすかさず銃口を向けた。香りも何も感じない。ただ、ヒヨコを感じ、穏やかな気が広がっていく。







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「ありがとうヒヨコ・・・!僕は・・・勝つ・・・!!」










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 銃声とともに、トーマが崩れ落ちる。負けるはずもない格下の相手。獣臭い、下賎な獣人に・・・。しかし、今は何の匂いもしない。・・・そうか・・・これが、死の香りか・・・。トーマはその動きを止めた。しかし、表情には穏やかな笑みが浮かんでいた。そこからは、穏やかな香りが広がってくる。








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 もう一方では、ヴァルジッラとマチルダが戦っていた。しかし、凄腕であるヴァルジッラの矢を、マチルダはいつまでも防ぎ切る事はできない。





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「ふん、貴様ではわたくしの時計は奪えぬ。毒に塗れ、惨たらしく死ね」
「この表情・・・言動・・・この人、麻薬を使用している・・・?」













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 勝負は早い段階で、決着がついた。
 ヴァルジッラの毒矢がマチルダの胸に突き刺さる。言葉に出来ぬ激痛にその場に倒れこむ。マチルダ。一方で、余裕に浸かった冷やかな笑みで、マチルダに近づいていくヴァルジッラ

「貴様ではわたくしを救うことができない。わたくしを救えるのは時の刻み・・・そしてあの薬だけが、わたくしを救えるのだ」

 舌を出して、ニヤリと笑み、その場を立ち去ろうとした時であった。



















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「な・・・!?」

 一瞬の隙をつき、ヴァルジッラの肩に注射針を突き刺したマチルダ。その表情は苦悶に満ちていたが、いつもの笑みを浮かべて。

「ふふ・・・ふ・・・貴族に復讐する事はできませんでしたが・・・最後の最後に・・・一人の患者を救う事ができ・・・まんぞ・・・く・・・です・・・わ・・・!」

 そのまま力尽きるマチルダの横で、ヴァルジッラも崩れる。今まで世界を支配していた、文字盤、時を刻む音が消えていく。そして、自らを支配していた、毒気のような、黒いものが消えていった。




「・・・マチルダさん・・・やはり貴方は良い人だったんですね」

「!!」


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 ヴァルジッラの目の前には、モリブデンが銃を構えて立っていた。仲間を二人も失い、モリブデンは瞬きもせず、ヴァルジッラを見つめている。ヴァルジッラは叫んだ。

「こ、殺せ・・・!」
「君はもう殺意も毒もない。殺さない。君はもう自由の獣人だ」

 はやくここから逃げるんだ。それだけ言うと、銃口を降ろし、ヴァルジッラから離れていく。









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「く、クソ!殺せ!俺を殺せー!!」

 力も毒もなくなったヴァルジッラの粗野な叫びは、静寂に包まれた広間に反響した。しかし、そこに倒れている者達の耳には入る事は無い。










「すまんな、モリブデン。実はわしはヒヨコの・・・」
「ゴットヘルフさん。今は戦いましょう」

何かを察したようなモリブデンの瞳は力強く輝いていた。










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「ゴットヘルフさんはここにいてください。僕は領主をさがして・・・全てを終わらせます!」
「シャルロッテ、領主達を探すぞ。奴らは領主の間にいるはずだ!二手に分かれて向かうぞ」
「ヒヨコ・・・ワシは・・・すまん」
「はい!分かりました隊長!この戦いが終わったら、隊長・・・私の事をシャロって呼んでくだ・・・あ!もういない!もー!!」


 4人は各道へと分かれた。そして、戦いは最終局面へと流れていく。






 誰もいなくなった広間の通路から、ヴァレンがひっそりと姿を現した。















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「く、くそ!何てことだ!あ、あんなクソムシどもにCARDがやられるんて!・・・領主様に助けてもらうしかない!・・・こ、こんなところで死ねるかよぉ!!」





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今回で民兵vs私兵の戦いは終了です。
写真の量やシナリオの関係で、出番にムラがあり大変申し訳ありません。
残りわずかとなってまいりました!

伏線がほとんど拾えていない感じもしますが、極力皆様の設定は、ストーリー内に反映させようと思っております。



写真に写ってはいても、出番がない方は、今後もしっかり出番を作っていきたいと思います。