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第6話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります










00_ロゴ  


―本隊上陸 2ヶ月前―


林を走る体が重いのは、ぬかるんだ地面のせいでも、常夏の島に似つかわしくない寒さのせいでもなかった。

なにか、合わない酒を飲まされたような気分の悪さがヴァイスを蝕んでいる。

財産を守るため、かつての家主が仕掛けた罠や毒が遺跡に残っていることは少なくない。

だが、そんな死者の最後の抗いを切り抜け、すべてをつまびらかにするのがトレジャーハンターである。


そうであるはずのヴァイスを襲う、どこまで走っても収まらないこの体の内側がかき回されているような倦怠感は毒によるものではないことは確かだ。

原因不明の体調不良か、焦燥感か。好事家が跳び付く依頼品を廃墟や遺跡から何度も盗み出してきたベテランが、ルーキーのような弱音を吐く。
「さっさとおさらばしたいぜ……」

01_ヴァイス ましてや今回、自分から仕掛けた勝負がある。
一番に女王のダイヤを掴み取り、島を脱出する必要がある。

勝者となれば、一生遊んで暮らしても使い切れない富が手に入る。



ヴァイスは幾重にもかさなる蔓と藪を抜けてやっと開けた場所に着いた。

だが、そこには既に先客が待っていた。


02_バードン 異形の者。

アルスターコート、傾斜のついたブリムのトップハット、黒革の手袋、モノクル、杖。
紳士の黒に身を包んだ『圧力計』が、こちらを向いた。


「おや、おひとりですか?」


03_邂逅 「この島の地図を持っている者は必ずここにたどり着く。あの男の言っていたとおりでしたね」

圧力計は静かにうなずくと、ヴァイスのほうに歩き出した。

「大勢から選ぶつもりでここで待っていました……ひとりなのは残念ですが、ふむ。なかなか大当たりでは?」


04_挨拶 「申し後れました。私はバードン。学者をしております」

バードンと名乗るその男は、ヴァイスに向かってうやうやしく頭を下げた。

「貴方と目的は違いますが、私も探しものをしていましてね?」
品定めをするようにあちこちを見回すバードン。
ヴァイスはあまりのことに動けずにいる。

05_品定め 「身長 体重 骨密度申し分なし。心拍数の上昇を確認。落ち着いてから測れば良いか」

言葉を発する、視線も分からない異形の頭。
ましてや言っていることの意味が全く分からず、ヴァイスは独り言をさえぎる事もできない。

「しかし、ヴァイス(欠陥)とはいくぶん不安が残りますね。どこが悪いのでしょう。 関節? 内臓?」

口に出してもいない名を呼ばれた。
一方的に情報を知っている、得体の知れない格好の男。

同業者か、敵か。いずれにせよ秘宝探しを妨害されることだけは間違いない。







06_とびかかり 両腕を振り上げて、手甲に隠れたジャマダハルがその刃を露出させる。

「なんだ、頭か」

ヴァイスはバードンに向かって飛び掛った。


07_お勉強 「では、お勉強の時間だ」

ヴァイスのジャマダハルが、バードンがそれを避けるより速く鳩尾を深く突き刺す。


否、バードンがそれを許したのだ。

真芯を捕らえ、伸びきる左手。だが、その腕に肉を突いた感触がない。

バードンの体はヴァイスの左腕と重なりながら、そのままぬらりと右にスライドした。

「な……!?」

08_杖クイ 「何が斬れましたか?」


バードンがジャマダハルに杖を沿え、雲の巣をはらうように軽やかに去なした。
瞬間、馬車に追突されたかのように左腕が吹き飛ぶ。

体勢を崩しながらも持ち堪えるヴァイス。だが、もう二撃目を突く握力がない。


「素晴らしい! 折れませんでしたね? 耐久試験も合格だ」


09_ネックハング 「墓荒らしをしているのなら、墓守の怖さを知らぬわけもあるまい?」

モーメントを無視した体勢からの、無造作なネックハング。
ワイングラスをランプにかざすようにヴァイスの長身を持ち上げる。

「顔」と思われる部分の中央についた針がわずかに振れるたび、万力のような強さで喉元を締め上げられてゆく。


10_高い高い 「宝を守っているのも……っ、この毒も……、おまえなのかっ…っ!」

ヴァイスは掴み上げた腕に何度も刃を突き刺してみるが、バードンは意を介さず、語りかける。

「毒? 毒は知らんな。だが……ああ、若きレイダーよ。確かにある。ここには宝が、英国女王のダイヤ、コヒヌールが」

漆黒のアルスターコートの腕が風船細工めいてパンパンに膨らんでゆく。

「だが、それに群がる君たちもまた、私にとっては喉から手が出るほど欲しいんだ」

足は地面を離れ、高く高く、強く強く締め上げられる。

「私は見つけたぞ!」

ヴァイスの黒目が瞼の裏に隠れ、抵抗を止めた両腕がだらしなく垂れ下がった。

「秘宝を追い求め! 秘境に挑むことのできる! 野心に溢れた健康な肉体を!!」

11_絶命 バードンはヴァイスに顔を近づけると、自らの圧力弁を開放した。

体中から気化したグリセリンが噴き出し、靄がヴァイスを飲み込んでゆく。
張力を失ったアルスターコートが、しぼみながらゆっくりと横たわっていった。


12_のっとり 立ち込めている靄の中から、膝まづいたシルエットとが現れ、咳払いが聞こえた。

それはすっくと立ち上がると、地面に落ちていたコートを拾い上げた。













13_のっとり完了 「素晴らしい」

異形の男は、林の奥に姿を消した。









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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


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