第1話



本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります





~モルゲンロートの手記~

これが最後のトランスファーだ、と船頭が告げたボートに乗って、私は安堵していた。

ランゴーンを出発して早3日。
ベンガル湾に浮かぶアンダムの島々を、ひたすら乗り換えていった船がその度オンボロになっていくのを目の当たりにした私たちも、ようやくこの不安な船旅に別れを告げることができる。

とはいえ、ここからが本番なのだから気は抜けない。
道中ずっと背負っていたDXペディション用の遠距離交信機にようやく火を点せるのだ。

と、船の舳先に座っていたあの男が立ち上がった。

「まずはじめに言っておく。いや、何度も言ったことか。私はお前たちを信用していない」

01_ファラメルディアスの写真
シルクハットとサングラスの間から覗いた目は、猜疑心に満ちていた。
ファラメルディアス・フォン・ザクローゼン。この旅の依頼人だ。
帝国議会の貴族院議員らしいが、私は政治のことはよく判らない。

「どこの誰かも分からないお前たちが、私が呼んだ捜索部隊よりも優秀だとはとても思えんのだ」
返す言葉もない。私は、目を合わせないようにレシーバーの調整をしていた。


「お言葉ですがザクローゼンさん、その信頼する捜索の先遣隊が消息を絶ってもう3ヶ月だ」

隣に立っていた銀髪の男が大仰な身振り手振りで釘を刺した。侘助さんだ。
ファラメルディアスはいっそう眉根を寄せた。

「ここは私の推挙するスペシャリスト達に任せるとお約束いただいたはず。そこは最後まで信じていただきたい」


02_侘助の写真
「そして、私も信じていますよ?皆さん方」

侘助さんは振り返った。『スペシャリスト』と呼ばれた私たちはみな、困ったように笑うしかなかった。

「こんな奴らに幻の宝玉の捜索が勤まるものかよ。だからこそ私本人が同行すると決めたんだ」

ファラメルディアスは組んでいた腕を、コートのポケットに入れた。
「それにしても寒いな……。11月とは言え、アンダムだぞここは」

風は強くなり、さっきまで半袖でも暑かった体がぐんぐん冷えてくる。

船頭が指をさして呻いた。まるで見てはいけないものを見るかのように。
「なんだ……ありゃ、雪……か……!?」


私は受信器の位置情報を確認した。北緯14度。インドで言えばカルナタカだ。進むべき方角は間違えたわけではない。
常夏のアンダム諸島、私たちの目指す島の稜線が、薄く積もった雪で白く輝いていた。















03_ロゴ


























04_靴の写真
じゃぶり、と靴のウィングチップが冷たい泥で埋まり、ファラメルディアスは心底不快そうに独りごちた。

「すばらしい第一歩だ」


























05_翡翠の写真
「それでは、道中の星見をお願いいたします。翡翠さん」






06_ラバナーヌの写真
「すばらしい料理を期待しています、ラバナーヌさん」






07_ポワゾンの写真
「道中の衛生管理についてはポワゾン医師」





08_ヘンゼルの写真
「用心棒のヘンゼルさんの腕っ節は私が保証します」






09_ミーナの写真
「地理についてはミーナ女史、可能であればこの雪の解明も」






10_モルゲンの写真
「そしてモルゲンロートさん、本島との通信手段はあなたが頼りです」







侘助が一人ひとり肩に手を置きモルゲンロートたちを紹介したが、ファラメルディアスは聞き飽きたと言う顔だった。
「ふん、バラエティに富んだ連中なのは分かった。……碌な訓練を積んでいない素人だということもな」





「ご明察で。じゃあその素人の俺たちにアンタは何を託したんだい」
ヘンゼルが口を衝いた。


11_ヘンゼル2
「お前のことは知っているぞ、ヘンゼル(Hansel)、いや、ハンス(Hans)・エンゲルベルト・フンパーディンク。フンパーディンク家の秘蔵っ子だな」

全員がヘンゼルのほうを向く。フンパーディンク家といえば西の大きな魔術団体だ。

「この作戦は貴様のような自称風来坊に任せるには荷が勝ちすぎる。こんな所で油を売られて怪我でもしてみろ、私が困るんだ。膝に擦り傷を作る前に、グレーテに迎えに来てもらえ」

「手前ェ!黙って聞いてりゃベラベラと!」
ヘンゼルが前のめりになり、銅鑼のついたケインを振りかぶった。
椰子の木が葉を鳴らし、停留していた小さな船が大きく傾いで船頭がバランスを崩した。

ラバナーヌが慌ててヘンゼルを抱きとめる。
「まあまあヘンゼルちゃん。もう最後の船まで乗っちゃったもの、誰も後戻りはできないわ。喧嘩するのは帰ってからにしましょ?」
風の唸りは止み、ヘンゼルがケインを降ろした。

「成程、その強さならボディガードには十分か。皆を守れよ?私を含めてな」

ファラメルディアスはヘンゼルをなおも挑発しながら、荷物を肩にかけた。

「ああ、言い忘れていたが、現地の案内はコーディネータに任せてある。星見も地学も不要だ。待ち合わせ場所に向かうぞ」





12_聞いていません
侘助が眉根を上げる。
「聞いていませんが」

「言い忘れたと言ったろう。今伝えることに何か問題があるのか?」

「同行者の選択権は私にあることが契約にあった筈です」

「あの執事からは聞いてはおらんな。戻ったらクビにするとしよう」


ファラメルディアスは意にも介さず、船着場を背にして歩き出した。



13_出発






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原案・文章(マイケル)
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