2018/02/23
第2話
本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります
~モルゲンロートの手記~
林を抜けると、カーキのブッシュジャケットが似合う中年男性が立っていた。
「いやはやファラメルディアス様、お待ち申し上げておりました」

セイヤンさんは、私たち全員に膝まづいて握手をしてくれた。
柔らかな笑顔とがっしりとした掌の硬い握手が、私たちを労おうという気持ちで溢れていた。


ファラメルディアスは無遠慮に自分の荷物をセイヤンさんに放り投げた。

追い討ちをかけるようにヘンゼルさんがセイヤンさんに荷物を預けた。調子のいいというか、人の気持ちの分からない人だ。
でも、そう思う私もセイヤンさんを手伝うことはできなかった。私自身が、それどころではなかったからだ。
電波が通じない。
この日のために改造した空中線を違法出力まで回しても、最後に乗り継いだ島の岬に置いてきた基地局すら中継できない。圏外の雑音識別信号すら送れない。
短波帯に切り替えても駄目。
最後に確認をしたのはいつだった?
列の最後尾でぶつぶつと唸っていると、不意に侘助さんが振り返った。

このまま直らないのなら、打ち明けなければいけない。でも……。

隊列は再び林を進んでゆく。
岬から見えていた表層の雰囲気とは打って変わって、鬱蒼と生い茂る幹と葉は太陽を探して曲がりくねって行った。
ナイフとロッドで先頭を切り進むのはファラメルディアスとヘンゼル。
その後ろにラバナーヌとポワゾン。
荷物をいくつも抱えた現地コーディネータのセイヤン。
翡翠、ミーナ、侘助。
最後尾ではモルゲンロートがせわしなく装備をいじりながら歩いていた。

セイヤンが両手で抱えた背嚢の左右から顔を覗かせながら1文節ずつこの島を紹介した。
「幻の島?ずいぶん夢のある名前だね」
話に乗ってきたのは吟遊詩人、翡翠。

息を切らせながらのテンポの遅い解説にミーナが早口で答えた。

「なんとまあ!お詳しいのですね、ミーナ様。セイヤン、感服いたしました」
「そうでしょうそうでしょう」と、侘助は満足そうにほくそ笑んだ。

「へえ、じゃあもう原住民に教われたりする心配はないんだな」
「ええ。ですが気になるのは現在の島の状態です。ここに植生する常緑樹が低温に弱い種ばかりであることからこの寒さと雪が異常気象であることは明白です。また上陸時に海面に出ない種類の珊瑚礁が露出していたのを確認しました。つい最近大きな地震か地殻変動があったことが分かります。いずれにせよこの島の気候は非常に不安定です。そして特筆すべきは瘴」
「分かった分かった。ミーナちゃんもあんまり早口で歩くと舌噛むぜ。もうすぐキャンプにつくんだろ?そこでしっかり話を聞くさ」
翡翠がそう言ってようやくミーナは静かになった。
後ろの大演説に耳をやりながら、ファラメルディアスはパーティを腐した。
「まったく、すぐに火が付くボンボンに聞いてもないのに喋り出す本の虫。それぞれ保護者が必要だな」
言葉の悪意はヘンゼルに向かって放たれたものだったが、ヘンゼルは反応しない。
ヘンゼルが歩みを止め、隊列を制した。

「おいまさか原住民か!?」
「はずれだファラメルディアス。火薬の匂いがする」
林の影から、落ち着いた声がした。
「然様。我は蛮族に非ず」

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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)
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