第4話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります










???の独白 ―本隊上陸 2ヶ月前―


もうすぐ島が見えるころ、というところでフードの男が聞いてきた。
「なあ、アンタはどこでこの話を聞いたんだい」


私は、酒場と答えた。

「酔っ払いの与太話を信じてここまで来るとは、アンタも相当肝が据わった人だな」

私は、はにかんで何も答えなかった。

ヴァイスと名乗るこの男は、この中では一番の経験者のように見えた。
両腕の碗甲からは、細身の刃が見える。

「そうね、最後の港でこのボロ船を見たときは引き返そうと思ったもの」


私が口を開かずにいると、その空白に北欧の顔立ちをした女が話に乗ってきた。

ナタリアと名乗るこの女もまた、戦闘に優れているように見えた。
腰に提げた鎖鎌の分銅は護身用のサイズを大きく超え、囚人の足枷じみた質量を主張している。

私は、名前から大公国人かを訪ねた。

「育てた人がロシア人だったからナタリアと名乗っているけど、産まれはプロイツなの。あなた、学があるのね」



この「ボロ舟」には、私とヴァイスとナタリアの他に4名が乗っている。
銀髪の獣人、オスマン系の顔立ちの少女、ペストマスクをつけた呪術師風の男、髭面に革の仮面とウェディングドレスを身につけた中年男。

「他の奴らが気になるかい?」

私は、まあねと答えた。

「犬耳・・・雪柳、だっけか?あいつは優しいが気弱そうなヤツだ。キギとかいうエスニックなガキも悪いやつじゃない。だがあの2人は俺から言わせりゃ足手まといだ」

「ペストマスクの野郎、アダムは……ありゃ変人だ。頭は良さそうだが、話が通じない。一番うしろの、あの見るからに女装のオッサンは……俺もまだ話しかけてない。武器も持たずに何しに来たんだ?」

私は、なるほどと相槌を打った。
悪くない観察眼だが最後の男からは粗製火薬の臭いがする。丸腰ではないはずだ。
と、その女装男がにわかに立ち上がり、船が小さく傾いだ。両眼の遠眼鏡をかざして一言、綺麗ねと呟いた。

「マジかよ、雪が降ってるじゃねえか!」

私は、珍しいこともあるものだと返した。





00第4話ロゴ



係船柱に小さなボートをつなぎ、各人が荷物を背負い込んだ。




01踏みしめる ブーツソールが雪と泥に沈み込む。南国には稀有な寒さが肌を刺す。だが、そんな天候が捜索隊の意気を止める筈もない。



02先遣隊 捜索隊が依頼主であるファラメルディアス=フォン=ザクローゼン貴族議員から与えられた任務は島の地質調査および文明の同定であった。その中には「同定のために必要と判断した現地物品の回収」が含まれている。


そしてこれこそが50年前に何者かによって持ち去られた大英帝国のダイヤ、クーヘヌールの奪還であることを、捜索隊の誰もが知っていた。



03アダムとヴァイス 「感じるぞ。マハトマ、偉大な魂の!その迸りが!」
アダムが諸手を挙げ、全身を振るわせた。

「まさか同意見とは思わなかった。そのとおりだよアダム。ここは無人島だがごく最近に誰かが来ている……こりゃあ与太話じゃなさそうだ」

ヴァイスは船の上で私に自分が腕利きのトレジャーハンターであることを教えてくれた。
多くの経験と直感が、彼を後押ししているのだろう。

「宝玉はまさしくこの地に在ろう。とは言え認識ができねば真理に至れぬ。ああ、一刻も早くこの目に焼き付けたい」

アダムは山の向こうを杖で指差し、ヴァイスもそれを目で追っていた。





04ナタリアヴァイス 「こんな処まで来たんだもの、無駄足じゃ帰れないわ。絶対に宝玉をネックレスにしてやるんだから」
「強欲なヴィクトリア女王も居たもんだ」
2人は顔を見合わせ、微笑んでいた。






 05ナタリアジェーン 「貴方はどうなの、もし宝玉が見つかったらどうしたい?」
ナタリアが女装男に聞いていた。
「ジェーンよ。私は私を殺した犯人を捜しているだけ。捜索の足掛かりになる報奨金が貰えればそれでいいわ」

「意外に無欲なのねジェーン、貴方が見つけたら私が報奨金の倍払って買い取ってあげる」




06ヴァイスの提案 「・・・なあ、確かにそうだ。ここに本当にヴィクトリア女王のダイヤがあるのなら、単なる地質調査にしては破格の報奨金も端金だ」



捜索隊は、当たり前の結論に達した。
これから全員が探す物は、一介の貴族議員が支払う報奨金よりも遥かに価値のある宝であるという事実に。



07map.jpg ヴァイスが地図を広げ、全員がそれを覗き込む。

「誰かが一番にこの島に眠るお宝を見つけ出し、ここに戻って、この船でひとりで島を脱出する」

ヴァイスは地図の西、現在地である岬を指差した。

「置いていかれた者は依頼主の救助を待ち、勝者はその間に行方をくらませるってことね」

「そのとおり、負けたら恨みっこなしだ。どうだみんな?」

ヴァイスが問いかける。にわかに張り詰めた空気に戸惑う者は居ても、反論する者は居ない。

「こうなることは内的直観が告げていた。もとよりそのつもりである。無論、宝玉を手に入れるためならその勝負に喜んで参加しよう」





08雪柳キギ  「そしたら報酬を6等分って契約は……」
雪柳がつぶやきながらポケットをまさぐっている。

「あんた何言ってんの?ここには7人いるじゃない」

キギは円弧を描きながら自分自身、雪柳、私、ジェーン、ナタリア、ヴァイス、アダムを指差した。
確かに、ここにいる人数で山分けすれば7等分が正解である。

「あれ、じゃあ貰った書類は間違いだったのか……」

キギは雪柳のポケットに手を突っ込み、引き抜いた書類をそのまま破り捨てた。

「記載にミスのある契約書なんか失効よ。勝ち取った1人が直接依頼主と現物を以って交渉すればいいの」







09背中 「ここから先はお互いがライバルだ。俺は林を抜けて祠に行かせてもらう!今生の別れになるだろう。じゃあな!」

それぞれが口々に捜索する方面を宣言し、走り出していく。

私は、沿岸から当たろうと言い、全員の背中を見送った。







私は船着場に戻ると、ボートのロープを係船柱から外し、その先にバケツをくくりつけて沖に向かって放り投げた。

バケツが離岸流を捉え、沖に向かってロープがピンと張った。
舳先を強く蹴り出すと、勝者の舟は誰をも載せず、ゆっくりと沖へと進んでゆく。

ポケットから無線機を取り出す。


「掛かったぞ。全員殺せ」


私は、そう言った。















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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


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