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第10話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります



00_嗜虐

「グゥ・・・・・ウゥ・・・・」
雪と熱帯植物が同居する奇妙なジャングルで、崩れた塀に身を潜めている人影がひとり。














01_damage.jpg
雪柳である。





















01-2_逡巡
01-3_脱兎 ヴァルターとの戦いで辛くも逃げおおせた雪柳であったが、この物陰に身を寄せてからは一歩も動けずにいた。

体を縛り付けるものは何なのか。

斬り結んだ時出来た傷は大したものではない。組み敷かれ、剣を突きつけら命を脅かされた恐怖でもない。



それは、一言で表せば悪寒だった。
全身の寒気と倦怠感、吐き気そして目眩が雪柳を蝕んでいた。


息の続く限り走り続けたのだから当然身体は疲弊する。しかし、その疲れが一向に癒えない。

そして雪柳は立つことも困難になり、体を縮こまらせ震えながら、やがて気絶した。






どれだけの時間が経っただろうか。雪柳の意識を現実世界から引き揚げたのは、男の声だった。

02_マッド 「お前は国(アメリカ)を愛しているか?」


張り出した木の枝に腰を降ろし、男がこちらを見下ろしていた。



星条のスカーフ、赤と紺の外套。

ウエスタンハットに、安物のゴーグル。

腰に巻いたむき出しのダイナマイト。




「お前は・・・・・・! “マッド”!」



雪柳は、男を知っていた。




マッドと呼ばれたその男は、口の端をいびつに持ち上げた。



「おお、俺を知ってたか」

アメリカに住む外国人労働者でその名を知らぬ者はいない。



マッド。本名アルマッド・ハミルトン。
元塗装工の脱獄囚である。

逮捕時には23州を放浪し暴行・殺人を行ったとされている。









「俺も、そのミリティア・ガントレットを知ってるぜぇ。 お前、サンフランシスコの獣人だろ」
「……ッ!!」







雪柳がたじろぐ。

自分が、被食者であるからだ。

愛国者・クリスチャンを自称するマッドが手をかける対象は、いずれも貧しい外国人や亜人であった。

マッドはその姿から”血染めの星条旗”と報道され、ごく一部の人間から熱狂的な支持を受けていた。





「お前ら獣人は黄金に目が眩んだケダモノだ」







雪柳が生まれた獣人街、その発祥はカリフォルニア・ゴールドラッシュに沸いたサンフランシスコの外国人労働者集団である。






行き過ぎた愛国心はそのまま排外主義として、



「お前ら獣人は国を堕落させ、街を汚すケダモノだ」



快楽殺人の大義名分となる。








03_投擲 「オラァ!」


マッドが腰のダイナマイトを引き抜き、側薬付きのベルトに当て擦る。

火花を散らした爆薬筒が、雪柳に向かって放たれた。










ダイナマイトは雪柳の数メートル手前の地面に落とされ、ほぼ同時に炸裂。
激しい火柱が起こり、爆風の作り出した土煙が辺りを灰色に染めた。




04_爆発 「グッ……アアッ!!」

もうもうと立ち込める土煙が晴れ、中にのたうち回る雪柳の姿があった。
爆風を諸に受けた小石が脇腹を抉り、枝が右腕を貫いていた。












05_愉悦 「ひゃははははああははははは! それが! 報いだ! アメリカを穴だらけにしたお前らを! 今度は俺が穴だらけにしてやった!」


マッドは木の上から動かない。
ガントレットは届かず、安全地帯からの一方的ないたぶりが続けられた。








わざと直撃させない距離での爆撃。
破片が雪柳を苛み、爆風が肌を焼いた。


土埃と血油にまみれて呻く声は次の爆発にかき消される。



殺人鬼は、ゆっくりとダイナマイトを投げ続けた。

酒場でひとりダーツを投げるかのように、静かな川面に小石を落とすかのように。




さらに幾度めかの爆発の後、マッドが不意に投擲を止めた。

アンニュイな表情でベストからスキットルを取り出して、一口あおる。

バーボンを飲み下すと、遠くを見ながらひとりごちた。



「『今日がお前の命日だ』…ってセリフあるよな。西部劇で悪役が言うようなヤツさ」



雪柳は逃げようとしていた。弾切れか、休憩か、飽きたのか。
わからないが、攻撃の手が止まったのだ。
しかし破片で切り刻まれた体で這いずろうとも、マッドは気にする様子もない。








06_瀕死 「意外に優しい言葉だよな?」

状況が変わるとはとても思えない。だがそれでも必死の抵抗を見せる雪柳に、まるで世間話をするかのように落ち着いた声で語りかける。



「俺はお前にそんな事は言わねぇ。誰にも知られずここで怯えて死ね」


マッドは大きく振りかぶって、ダイナマイトを投擲した。









07_投擲2 それははじめて雪柳の背中で爆ぜた。















08_とどめ 一際大きな火柱。地面がまくれ上がり、粉塵となって炎と共に吹き飛んだ。


爆煙を背にマッドは、やっと腰を上げる。


ひとしきり漕いだブランコから他の遊具へと移るように
少し寂しげに木から飛び降りると、あの歌を口ずさんだ。


"Oh, say can you see,
by the dawn's early light......."


赤と紺のマントを翻し、血染めの星条旗は林の奥へ消えていった。




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原案・文章(マイケル)
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