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第12話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります




00_ロゴ







ガットリングが空転しながら、こちらに鎌首をもたげている。
赤熱する砲塔と刻まれた金色の経文が高速に融け混ざり、主人の攻撃命令を待つかのように唸りを上げた。


数珠型スターターを指に提げ、主人である虚無僧・鏘園は低い声で告げる。



「みな等しく黄泉へと降った。獣人も、墓荒らしも、女も、狂人も、枝も、真理を嘯く天狗も」



雪柳、ヴァイス、ナタリア、ジェーン、キギ、アダム。

宝玉に目が眩んだ者は皆、島を守る刺客たちによって殺された。
大英帝国の噂話にすがって安易に未来を渇望し、ひとりひとりが足元を掬われた。


「へえそうかい。でもアンタが経をあげたのは一度きりなんだろ」

01_ズサー 相対する捜索隊の用心棒、ヘンゼルはまだ動かない。



「此度で二つ目となるであろう」

「連勝記録なんか作らせねえよ。あんたは1勝1敗で終わりだ」

印を組んでいた虚無僧の右手がトリッガーへと添えられる。
呼応するように、ヘンゼルの唇がわずかに動いて何かを唱えた。
「■■■■■■……!」



鏘園の読経とともに、ガットリングガンが火を噴いた。
「如是我聞、汝等衆生、当信是称讃、不可思議功徳、一切諸仏、所護念経」

6つの銃口からとめどなく放たれる強烈な発砲音が重なり、巨大な金属樽が転がるような音を立てる。


その弾幕をヘンゼルは縄跳びを楽しむかのように飛び越え、あるいは掻い潜った。





02_避け 「そんな重たい丸太で俺に当たると思わないほうがいいぜ」

無論、それは生身の人間に出来る芸当ではない。
ひとたび転経奇環砲が斉射を開始すれば、有効射程1100メートル内は低質のチーズの如く穴だらけだ。
地を這う生物が鏘園の“読経”から逃れるのは容易いことではない。


ファラメルディアス達が生き延びたのは、ヘンゼルの「反転」の号令で即座に藪の深い谷側に逃げ込めたからに他ならない。



奇環砲に真っ向から対するヘンゼルが自身に掛けていたのは加速の魔術。

心筋を加速させ、血流を加速させ、全身の筋収縮を加速させる。

その運動を制御する知覚をも加速させることで、奇環砲が照準を合わせるよりも速く動くことを可能にしていた。



鏘園は念仏を唱えながら全身をねじり、奇環砲を振り回し続けた。

僧に似合わぬ巨躯とその両腕で反動と重さに耐えながらヘンゼルを追う。
それでも砲弾は地面を耕し、木立や蔦を薙ぎ払うだけだった。



そしてヘンゼルを追うその動きが誘導されていることに鏘園は気づいていない。

右へ左へと次第に振り幅が大きくなった機関砲はとうとう持ち主の重心から外れ、鏘園は咄嗟に脚を踏み出さざるを得なかった。

姿勢の維持に気が割かれ、わずかに読経が止まったその瞬間、視界からヘンゼルが消えた。


一瞬の隙を突いて大きく跳躍していたヘンゼルが着地したのは鏘園の背後だった。

03_背後に立つ 相手に振り返るいとまも与えず、天蓋の中にあるであろう後頭部目掛けてロッドが叩き込まれる。

04_背後から殴る 籠を突き抜け、肉を突き抜け、頚椎に至るその衝撃で鏘園の意識は寸断。バランスを立て直すこともできず、脚の折れたワイングラスめいて前のめりに倒れこむ。


しかし、ヘンゼルはノックダウンを許さない。

鏘園が転倒するよりも疾く正面に周りこみ、腰に下げていたブランダバスを抜いた。



「ひとりやっつけるのに何発の弾が要るんだ?」










05_発砲1 「俺なら1発だ」




06_発砲2 ブランダバスから放たれた散弾はしかし、一点を目掛けて収束しホオズキのような軌跡を描いて鏘園の心臓を射抜いた。



絶命により弛緩した筋肉が膝を着かせるよりもなお疾くヘンゼルは加速し、駄目押しの一撃を見舞う。

07_フルスイング 頚椎を砕かれ、心臓を貫かれ、内臓を外側から圧し潰された後に



ようやく鏘園は地面に向き合うことを許された。

08_将園死亡 ジャングルに再び静寂が訪れた。


遺されたヘンゼルは、自身に掛けた大量の加速を解き、ふうと深呼吸する。

「あちゃあ、先にいろいろ訊いておくべきだったなあ」


名残惜しそうに虚無僧の遺骸を揺すった。無論、返事はない。


09_つんつん


大人数を制圧する力こそないが、加速を駆使した単純な暴力は1対1の戦闘において相手を簡単に圧倒することができる。

相手の死角に入ることも、急所に致命的な打撃を与えることも、発射された弾丸を小突いて軌道を変えさせることすらヘンゼルには容易いことだった。

その速さ故に、自分でも手加減がわからない。

ヘンゼルにできることは加速のオンオフを切り替えることのみであって、「尋問できる程度に痛めつける」などという細やかな制御は未習得のままであった。



「しかしまあ……無人島にこれだけの敵がいるってことは、ここにあの議員サマの探してる秘宝があるってのは間違いないな」

ヘンゼルは思考を巡らせる。

10_推理 先遣隊がここに着いたのは2ヶ月前だと聞いている。

ヘンゼルが馴染みの酒場で自主的な用心棒(と称したタカり)として働いていた時に輝石屋である侘助から声をかけられたのが1週間前。

そこからはあっという間で、本隊が揃ったのが最後の港を出る2日前。

計画が遅滞しているようにも、外部に情報が漏れるようなミスを犯しているようにも感じなかった。


なぜ俺たちは待ち構えられて襲われたのか。情報はどこから漏れたのか?
誰かに監視されている?

まだ確定に至る情報はない。ただ今回、ここに倒れている虚無僧の仕掛けた奇襲がまぐれでないとすれば、俺たちはまた襲われるだろう。

先遣隊6人が「それぞれ持ち場にて殺された」ならば、この深い森に潜む刺客はあと5人。
油断してはいられない。

――俺は生きて帰り、金を手にして必ず自立する。家柄でなく、自分自身の力を以って一から成り上がるんだ。



「まいっか。合流してから考えよう」

口をついた呑気な言葉と裏腹に周りを警戒しつつ、ヘンゼルはロッドを担ぎ
退却したザクローゼンたちを追った。



11_先へ進む









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原案・文章(マイケル)
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