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第14話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります



モルゲンロートの手記

大英帝国秘蔵のダイヤモンド、コヒ・ヌールの捜索。

貴族議員、ファラメルディアス・フォン・ザクローゼンが送った先遣隊は何者かの妨害によって殺されていた。

先遣隊が消息を絶って2ヶ月。ザクローゼン率いる捜索本隊は、無人島でふたたびその刺客に襲われた。


それでも。

私たちにはある種の安心感があった。
ザクローゼンが言うには、先遣隊には本格的な医療行為を行える者も、自生する植物から料理を作れる者も同行していなかったそうだ。

幻の宝玉を捜索する、という本来の目的を秘匿して行われたその「地質調査」に、大掛かりな支援要員をつける必要がなかったからだと。

でも、私たちにはポワゾン医師とコックのラバナーヌさんがいる。

そして、巨大な機関銃を操る怪僧をものともせず打ち倒し、無傷で帰ってきたヘンゼルさんが付いているのだから。


通信機が不調なのだけれど、幸いにも船から見た島の全景を考えて、離ればなれで遭難するほどの大きさはない。

何かあっても低い方に向かって歩けば、どこかの海岸にたどり着く。


はぐれた侘助さんもきっと、すぐに見つかるだろう。
全員揃ったら、早々に帰還を提案しよう。

それまでは、ヘンゼルさんが私たちを守ってくれる……。





モルゲンロートの根拠のない楽観は、次の日の朝、覆された。












00_ロゴ







「うわああああああ!!!!」











01_発見 ザクローゼンが腰を抜かし、噴出した恐怖が喉を震わせ慟哭となって島中に響き渡る。

朝食の時間になっても戻らないヘンゼルのパトロールを心配した一行が見つけたものは、あまりにも無惨な光景だった。

落ち葉は黒く濡れ、敷かれている雪が丸く、紅く染まっていた。
円の中心に横たわっているのはヘンゼル。








02_検死 ポワゾンが駆け寄ってヘンゼルの腕を取るが、そのおびただしい出血の量が、そこにいる全員に彼の死を証明していた。


「……。はい、死んでいます」

遺体全身をまさぐる。背中の大きな傷を除けば、それはあまりにも綺麗な遺体だった。



「背部の動脈に向けて刺されたあと、捻るなどして傷口を押し広げられています。切創部付近に血ではない液体の乾いた後が見受けられる……恐らく毒と失血による死亡です」

冷静な検視が続けられる。ポワゾンは誰とも目を合わさず、死因を断定した。



03_死亡確認 「他に怪我を負っている箇所はどこにもありません。服も乱れておらず、争った形跡もない。背後を取られて一瞬で殺されたと思われます」

淡々と事実を突きつけられ、そこにいる全員が自らの立たされた状況に気付く。

用心棒の死。対抗手段の喪失。未だ見ぬ刺客は今この瞬間もどこかで命を狙っている。
捜索隊は、一夜にして無力になった。
そこに居る全員が顔を見合わせていることに気づいたザクローゼンは、口をぱくぱくさせて必死に声を絞り出した。

「……だめだ! だめだぞ! 俺たちは帰らない! “たかがひとり死んだ”だけじゃないか! コヒヌールだぞ!? 大英帝国、女王の権威の総てだ! 俺たちはまだあと6人もいる! 俺も、お前たちも帰さない!」

明らかな虚勢だった。誰よりもザクローゼン自身が怯えている。
目的という大きな杖にすがりつくかのように膝を震わせながら立ち上がると、セイヤンに掴みかかった。




04_恫喝 「おいコーディネーター! 目的地まであとどのくらいある!」

「侘助様が目星をおつけになっていた場所までは、まっすぐ進めばあと1日ほどで」

セイヤンがあたふたと取り出した地図を奪い取って先頭を切ろうとするザクローゼン。

「じゃあ走るぞ!」

怖気付く全員を、何より自分自身を奮い立たせるように行軍を再開しようとするザクローゼン。

「お待ちください」
それを制したのはミーナだった。この事態にあっても、彼女の言葉は変わらず冷静な早口だった。

「その結論は早急すぎます。セイヤン氏に伺いますがこのまま直線距離を走った場合に経路に危害を加える意志のある者が隠れられる場所はどれくらいあるのでしょうか」

セイヤンはザクローゼンから地図を優しく取り返すと、一呼吸を置いて答えた。

「……正直に申し上げますと、無数にございます。これから皆様が向かわれる場所はこの島の遺跡の最奥。身を潜められる建造物が立ち並ぶ只中です」

セイヤンの言葉に嘘はない。島にはかつて栄えていたであろう文明の亡骸が遺跡となって点在しており、主だった建造物は地図にも示されていた。

「目的地である島の中心部と私たちを結ぶ線上にはいくつもの……読めませんが、文字列が重なっています。急いで敵の待ち伏せを受けるような場所には立ち入らないほうが良いかと。……それにしても、この文字……」

ミーナご自慢の早口が濁る。
眉根を寄せて覗きこんだ地図には、解読不可能な文字が記されていた。

それらは、この島の領海内の国の言語でも、ここにたどり着くために今まで経由してきたどの地域の言語でも当てはまらない文字体系のように見えた。

「じゃあどうすればいいんだ!」

おかまいなしにザクローゼンが怒鳴る。
苛立ちをただ乗せた言葉には、貴族議員の威厳も指揮者としての判断力も無かった。


05_まあまあ 「とにかく開けた場所を選んで進みましょう。迂回にはなりますが、皆様のご安全をお守りする立場としては、それしかお勧めはできません!でなければ、私としては撤退をご判断いただきたい」

ザクローゼンは天を仰ぎ、唸った。









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原案・文章(マイケル)
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