FC2ブログ

第22話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります


00_ロゴ~モルゲンロートの手記~

夜中に目が覚めてしまった。

ザクローゼンさんが死んでしまった。

そして、私も人…人とは呼べないかもしれないけど、血の通った相手を撃ち殺してしまった。

血を噴き出し、苦しんで、死んでしまった。
でもその時は怖くて、精一杯だった分、いくらか冷静だった。

我に帰ったのは、蛇や鳥が一斉に何かから逃げていくのを見た時。

理由はすぐに分かった。

森の向こうから、何かが燃える臭いがしてきていたから。

銃撃戦の火薬の残り香にしては長いと思っていたのだけど、動物たちが逃げてきた方向から
匂いが強まっていることで、それが火事だと気付いた。

ここまで燃え広がる前に港のほうに逃げようと立ち上がった矢先、大粒の雨が降ってきた。

短い時間だったけど、スコールは森の向こうの火事も匂いも洗い去ったようだった。


私はキャンプ場の無事が気になって、走って戻った。

キャンプ場の調理場で、人が死んでいた。

一番激しく燃えて、何もかもがボロボロに焼け焦げていたのが調理場だった。


ラバナーヌさんだった。

そこで私はやっと泣いた。悲しくて、心が痛くて、感情の置き場をどこにやれば分からなくなって、ただただ泣いた。

私がザクローゼンさんを呼んで離れてなかったら、襲われずに済んだんじゃないか。ラバナーヌさんを1人にさせたから、火事になったんじゃないか。
私のせいなのかもしれない。私が・・・・




手記はここで途切れる。モルゲンロートが筆を止めたためだ。





彼女はそれまで寝転がっていた体を起こした。どこかから、短くとも壮絶な叫び声を聞いたからだ。

絶叫の聞こえた方は、暗く深い闇の中だった。


涙をいっぱいに溜めた目を擦ると、ゴーグルを掛けた。

モルゲンロートのゴーグルは暗視性能を持っている。工業製品の廃棄場近くに暮らしていた彼女は、朝な夕な廃棄場からジャンク品を拾っては修理・改造し、生活の糧としてきた。

ゴーグルもまた、捨てられた軍用品を直したものだ。



息を殺し、声を聞いた方角に向けて、赤外線を照射した。

クリック音を出すことすら躊躇いながら、感度を上げていく。


おぼろげに映し出されたのは、2人の人間のシルエット。重なりあってよくわからなかったものが、片方が倒れ込んだことで、はっきりと知覚された。


地面にくずおれた痩せぎすの男と、ハットを被った小太りの男。


見違うはずもない。ゴーグルに映し出されたのは、セイヤンが翡翠を殺したその瞬間だった。


全てを知ったモルゲンロートは縮こまり、ただただ夜が過ぎるのを待った。




永遠のような長い時間を恐怖に包まれながらもだんだんと空は白け、何事もなかったかのように朝は来る。




01_帰りましょう 「モルゲンロート様、ミーナ様、おはようございます。少しでもお休みになられましたでしょうか」

「ええよく眠れました。昨日の暗殺者襲撃でひたすら走ったためだと思います。夜警にご協力できず申し訳ありません」

ミーナが早口で謝罪した。

「とんでもない! 現地コーディネータとして皆様の安全のために努めるのも、ザクローゼン様から承っている私の仕事ですから。翡翠様の協力もあって私も寝ることができましたしね」

セイヤンは努めて明るく答えた。


「そういえば翡翠さんはどちらに」

モルゲンロートは俯き身を竦めていたが、翡翠の名を聞いてさらに体を強張らせた。

「そのことなのですが……おふたりにひとつご報告があります。皆様が上陸された際に使われたボートが流されてしまっていたようです」

「しかしご安心を。私がここに来るために使ったボートがもう一艘ございます」


モルゲンロートは小さく震えている。


「元々荷物を載せてやっとの小さな舟のため4人が乗るのは難しいと判断し、先ほど翡翠様をお連れして最寄の港までお送りして戻ってきたところなのです」


全てが嘘だった。

「次はおふたりがお乗りいただき、港に着いたら誰かに船を届けるよう依頼いただけますか? 私はそれをお待ちして最後に皆様の荷物と移動いたします」

小舟には細工がされているのだろう。

途中でエンジンが止まり漂流するか、沈むか。
どの道、自分たちを見逃すはずがない。


そう確信したモルゲンロートは堰を切ったように泣き崩れてしまった。

困惑するミーナ。セイヤンは突然の涙に面食らいながらも、これ以上のパニックを避けようと事態を進めようとする。


「ささ、こんな恐ろしい島とはおさらばです。船着場に参りましょう」

「いやぁっ!!」

怯え切ったモルゲンロートには恐怖でしかない。

セイヤンが腕を取ろうとした瞬間、突き飛ばされてしまう。

「このっ……!」

平静を装っていたセイヤンも、明らかな拒否反応に顔を歪めた。

一触即発。



すると突然、どこかから声がした。


「生まれた国、育った家、残した言葉、この仕事……。何もかも中途半端で、何が正しいかわからなかった」


茂みの向こうから、マスクの男が姿を現した。


02_そこまでだ 「だが目の前にある女の涙を見過ごせるほど俺は非情じゃない。俺は、俺がいま何をしたいかは判ったよ。俺は、自分の力でダイヤを手に入れる」


捜索隊暗殺チームの1人、イェニチェリの末裔ナルギレが立っていた。

迷わずスラリと腰のヤタガンを抜く。


その鋒は、ダイヤ捜索隊の2人にではなくセイヤンに向けられた。



セイヤンがナルギレの方に向き直り、呆れた表情で嗜める。


03_裏切り 「ハハハ! 誰かと思えばナルギレ、お前か。ボヤ騒ぎは徒労に終わったぞ。ほら、誰も死んじゃいない」


「そりゃあ良かった。これ以上ここで殺しはしたくない。できればお前もだ」


パニック状態のモルゲンロート、剣を構える暗殺者と思われる男、男と知った仲のセイヤン。


異常な光景とそこから導き出される必然的な結論に、ミーナが思わず口をつく。

「セイヤンさんあなたは……」




04_動くな 「大人しくしてろ!! 」

セイヤンがミーナを羽交い締め、ナイフを首に突き立てる。


「お前ら動くな! 用心棒も依頼人も殺して、俺1人で最後の2人を始末する……そう思って追い詰めてたのによぉ! お前のセンチメンタルで総てがパァだ!!」



「残念だが、追い詰められているのはお前の方だセイヤン」


物陰からもう1人男が現れる。



05_加勢 プロイツ帝国軍人、ヴァルター・フォン・クロンベルクである。

ヴァルターは捜索隊を暗殺するため、セイヤンが組織したチームの1人だった。
2ヶ月前に上陸した先遣隊の雪柳との交戦後、消息を絶っていた。



「核電金剛石・バーグリヒト奪取のため拘束させてもらう。大人しく投降するなら捕虜の保護は陸戦協定に則ってやろう」


バーグリヒトとは、クーへヌールが持つ「山の光」という意味の帝国語である。

捜索隊の依頼人であるザクローゼンと同様にダイヤの存在を嗅ぎつけた帝国からの命を受け、クーへヌールを奪取するために遣わされたスパイであった。

悪辣なセイヤンの命に従うように見せながらも、刺客たちが先遣隊を殺害した後、身を隠していたのだった。




06_ゲッヘッヘ セイヤンが醜悪な笑みを浮かべる。その顔に、部下が寝返った驚きは無い。

「ヴァルター、どこに隠れていたかと思えば……やはり犬に帝国は裏切れないか!!」


ヴァルターがロングソードを最上段に構える。

重く長い鋼の塊がセイヤンを威圧するが、ミーナの喉元に突き付けられた刃は下がらない。


「おっと動くなよ! お前ら甘ちゃん共の性格はよく知ってる。この小娘の命が惜しければ下手な真似はしないことだ」




08_動くなよ 構えこそ解かないものの、ヴァルターもナルギレも膠着を脱することができなかった。

捜索隊が瓦解した今、ミーナを死なせる理由がない。
義を重んじる軍人と情に厚い男2人にとっては、個人の信条が邪魔をする。

「さあ、見たくばそのままついてこい。クーヘヌール、その本当の使い途を教えてやる!!」


セイヤンが叫んだ。








■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント