FC2ブログ

第23話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります






 
00_ロゴ
ダイヤ捜索隊、ミーナの首元にナイフを突きつけ、じりじりと下がるセイヤン。

隙を伺い、詰め寄るナルギレとヴァルター、そして通信士のモルゲンロート。


しかし、追い詰めているわけではない。

状況を打開できないまま、一定の距離を近寄れずにいるだけだ。


01_追い詰めたぞ そして5人は、セイヤンの導くまま、広場へとたどり着く。




広場の中央には、それまでの遺跡やジャングルでは見られなかった、鉄と樹脂で作られた無気味な構造物が置かれていた。

それは、寂れたシェルターのようにも、朽ちた巨鳥の卵のようにも見えた。




02_シェルター そしてその上に、小さな子供。

静かに体を横たえたまま、眠っているように見える。

息をしている気配はない。




03_寝ている セイヤンはミーナを拘束していた腕を解き、モルゲンロートに向かって突き飛ばした。


「きゃっ!」

「だ、大丈夫ですか?」



04_大丈夫か 介抱するモルゲンロートを庇う位置に立ちながら、ナルギレはセイヤンに詰め寄った。


「抵抗は諦めたのか? ならば大人しくクーへヌールを渡せ!」



セイヤンは腰に提げた小箱を開いた。

取り出されたのは、ブリリアントカットに青く煌くダイヤモンド。




05_自慢 それは紛れもなく、英国を照らし西洋諸国を統べる象徴。

子供が玩具を自慢するかのように掌で弄んでいたセイヤンが、にわかに激昂した。


「誰が貴様らに渡すものか!」



06_誰が渡すか 「英国から総てを奪われたムガルの民の心が分かるか!」


「……!!」


全員が口を噤んだ。

1858年、インド諸侯の相互の争いに積極的に介入し最終的に全ての戦争に勝利した英国は、軍事力で圧倒したまま総督を据え、英国領として独占的にインドを“買い取った”。

一時は大陸全土に版図を広げる勢いだったムガルの滅亡は誰もが知るところだった。


「セイヤンさん……。あなたはムガル帝国の人だったんですね」

ミーナが口を開く。



「そうとも。私は東インド会社のスィパーヒー(傭兵)にして、ムガル反乱政府の暗殺部隊長、セイヤン。セイヤン・ハーンだ」



セイヤンの真の名に、瞠目するナルギレ。


「ハーン……!? お前、まさかバフト・ハーンの一族か!?」

「バフトハーン……?」


事情の飲み込めないモルゲンロートにヴァルターがフォローを入れる。

「バフト・ハーン……インドで起こった大反乱、セポイの乱の首謀者、反乱政府の総大将だ」


「紹介ご苦労。いかにも。このダイヤはインド大反乱の折、女王暗殺のため英国に渡った際に奪い取ってきたのだ。ガラス玉とすげ替えてな」


「ダイヤは奪えたが、暗殺も反乱も……失敗に終わった。皇帝は流刑され、あの女王は今も私たちの美しいモスクや廟堂を破壊し、金糸の織物を売り捌き、民が餓えに喘ぎながら育てた紅茶を飲んでいる」




07_ドヤア セイヤンはクーへヌールを握りしめ、高々と拳を挙げた。

それは個人の怒りでなく、滅ぼされた亡国の慟哭そのもの。


「ならば! ならばひとつくらい返してもらおう!! ああ! 誇り高きパンジャーブの大地から産まれた光の山、クーヘヌールを!!」

幾人もの命を落としてもファラメルディアスが追い求めた捜索対象。

人質を開放し、刃を突きつけられながら、それを捜索隊の前に見せつけてなおセイヤンは動じない。

むしろ、王手を掛けたのが自分であるかのように笑っている。




08_どうする気だ 「それをどうする気だ!!」


「嘆かわしい! 救いようのない無知どもめ! このダイヤが放つ“光の山” が老いさらばえた女王が持つべき物ではない証を見せてやる!」

朝日に照らされたダイヤが一際に青く輝く。


その明滅に呼応するかのように、寝かされた少女の胸元にあるネックレスのような意匠が動き出す。



セイヤンは少女に向き直ると、ダイヤをそっと胸元に置いた。

ネックレスの爪が持ち上がり、静かに掴んで、ダイヤはあるべき場所に収まった。


09_装着 ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ…………



駆動音が辺りに響き渡ると、白磁のような肌にうっすらと紅が差され、少女はゆっくりと体を持ち上げた。


「自動人形(オートマタ)……?」


ミーナがひとりごちた。


10_むくり 生気の感じない口元と、半分を鉄機のゴーグルに覆われ、眼差しの分からない顔は沈黙をたたえたまま。

丁重に飾られた人形のように、静かに正面を向いていた。

しかし、歯車じかけのオートマタとは一線を画す、滑らかで無駄のない動きだった。



「は、よく躾けられた子供だな。そんな玩具を動かすために女王からダイヤを奪ったのか?」




「いやナルギレ、違う。核電金剛石の本当の力は……!」


11_違う 「流石ヴァルター……いや当然か。探し物の本当の意味ぐらい知っているよな!」


「その通り、この人形はダイヤに動かされている。そしてこの島の地殻には大量のニッケルの同位体が含まれている! そのニッケルが出す瘴気を電荷として蓄えているのがこのクーへヌールという訳だ」



「島の瘴気を存分に溜め込んだクーヘヌールを動力源とするこの小さな体には今、9000億ジュールに相当するエネルギーが溜まっている」


「……9000億!?」


9000億ジュール。

この産業革命時代にあってまだ実用段階にない最新の爆薬、トリニトロトルエン200トン分だ。


この島を10回灰塵に帰してなお余る熱量が、小さな少女の胸元に蓄えられている。


「それこそが英国女王の笏に収まるような飾り物ではない、クーヘヌールの真価なのだよ。大掛かりな石炭と蒸気の時代は終わりだ!! 我々はこの島から無限のエネルギーを得て、世界を支配する!!」


少女は産業革命を起こした蒸気機関を優に越える技術特異点であり、破壊兵器であった。
そして英国の秘宝、クーヘヌールはそのエンジンとして盗まれたのだった。


「電気人形、汝の名は”バイラビ”! それはあらゆる望みを叶える女神! さあ! ムガルを滅ぼした全ての敵を! 英国を! 世界を悉く焼き尽くすのだ!!」


12_第3部完 「認証」



少女が



小さくつぶやいて



ゆっくりと



左手を挙げる。




13_発射
掌がダイヤの発する、同じ青に色づいた瞬間。




影すら包み込む眩い光が爆発し、全員の視界が奪われる。

網膜を焼き切らんばかりの光の中で感じられたのは、落雷のような轟音と爆風。




反射的に目を背けた4人が再び顔を上げると、そこには変わらずセイヤンが立っていた。



だが



セイヤンの胴体、その中央に大きな空間があった。

14_大穴 丸く切り取られたかのように人体のそこにあるべきあらゆる筋肉、臓器、骨が無い。


「……ぁ?」



断末魔をあげる暇も与えられず、糸の切れた人形の如く崩れ落ちる。


バイラビと呼ばれた機械人形の左手からは未だバチバチと電気が迸り、放熱と思われる陽炎が立ち昇っていた。


バイラヴィー。

それはインド神話に登場する十大女神マハーヴィディヤーの一柱。
輝く広大な知識を持つ者と崇められる女神の中でも、破壊と創造を司る。

創造のために手段を選ばない破壊を起こす、無慈悲な女神である。



「ヒィッ……!!」


何が起こったかを認識したモルゲンロートが口元を押さえる。


バイラビがその声に4人の方を向く。

たった今存在を認識したかのようにゆっくりとした動作で、再び左手を持ち上げた。




「荷電再開」



15_逃げろ 「まずいぞ!! 退け!!」





■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント