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第24話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります







00_ロゴ


英国女王のダイヤ「クーヘヌール」捜索隊の生き残り、通信士モルゲンロートと博士ミーナ。


捜索隊暗殺の使命を負いながらも、自らの信念からセイヤンを裏切ったイェニチェリの子孫、ナルギレ。


スパイとして捜索者暗殺部隊に潜入し、クーヘヌールの奪取を目論んでいた帝国軍人、ヴァルター。


4人は崩れそうな廃墟の壁に身を潜めていた。


01_篭城 薄壁を隔てて4人を見つめるのは、小さな少女。


ゴシックな意匠の黒いドレスを纏い、少女は左手をこちらに向けている。


4人が手に入れようとしていたダイヤモンドは、瘴気から電荷を得る宝玉であった。


島から湧き出る無尽蔵の瘴気を電力に換えたそのダイヤで駆動する自動人形(オートマタ)。

名を、“バイラビ”と言う。



傍らには、体躯の中央に大きな穴を開けた死体。

島のコーディネータを装い、ファラメルディアスたち捜索隊を暗殺し続けた暗殺部隊の首魁。

今は無きムガルの民、セイヤンであった。


自らが起動した自動人形によって腹を抉り取られ、死に果てた。






02_遺体 「あのオートマタ、まさか荷電粒子を撃ってくるとはな」


首の汗を拭いながらヴァルターが瞠目する。

耳馴染みのない“荷電粒子”の単語に、ミーナのみが反応した。


「荷電粒子!? ではあの爆発は対消滅なのですね」


「ああ、あの閃光と爆発は間違いない。だがどの国も兵器としての実用段階に漕ぎ着けられていないはず……まさかムガルが隠し持っていたのか」


「信じられません。あの小さなオートマタの内部に粒子加速器があるとすれば技術的特異点並みの機構です」


信じられない、と言いながらもミーナの目は驚きと関心に満ちていた。

学術の徒として、未知の技術との遭遇は命の危険に勝る興味なのだ。


話について来られないナルギレが諫めるように2人の会話に割って入った。


「あー、楽しそうなところ悪いが。今起こった事について喋ってるなら俺たちにも分かるような言葉で話してくれないか」



「オートマタの左腕から射出された荷電粒子は対象物に接触するまで直進します。そこでエネルギーが爆発して粒子が対消滅を起こすことで……」


詳細を求められたと意気込むミーナの解説も、空回りするばかりだ。


「つまりどういうことだよ!」


やれやれ、とヴァルターが助け舟を出した。


「あの子の左手は莫大な電気エネルギーを光の速さで発射する大砲になっている。当たればどんな物質も分解されて消し飛ぶ。あいつの腹のように、だ」


ヴァルターがセイヤンの亡骸を指さす。


「唯一の救いが、あれだけ強力でも貫通はしないということだ。何か物にぶつかればその場で爆発が起きる。あの被害からすれば……直径30センチと言ったところか」


「こんな瓦礫の薄壁一枚でも、攻撃されるまでは俺たちを守ってくれるわけだな」


何百年経ったかも知らぬ廃墟の壁が、身の安全を保証してくれている。


「ああ、だからこそあの子はこちらを攻撃して来ない。電荷の再充填には幾らかの時間が必要なはずだ。無駄打ちを避けたがっていると言える」



「しかしずっとここにいたんじゃあジリ貧だ。腹も減れば眠くもなる人間と正確無比な殺戮人形。おまけにこの島にいる限りゼンマイは自動で巻かれ続けるんだろう? 先に隙を見せるのがどちらかは俺でも分かる」



誰もナルギレの言葉を否定しない。


バイラビは4人に向け左手を掲げたまま微動だにしていない。


お互いの視線は通ってはいない。

しかし時折風の鳴らす葉擦れの音、それ以外何も無い静寂が事態の膠着を証明していた。



「俺だってイェニチェリの子だ。馬上訓練は受けている」


ナルギレがマスク越しに笑って見せた。


「騎射をする時、一番大事なのは相手との距離を正確に読むことだ。止まっている的なぞ、目を瞑ってでも撃ち抜ける」



言うが早いか、ナルギレは崩れた岩壁から拳大の石を掴んで放り投げた。



瓦礫の壁越しに放たれたその一球は大きな放物線を描き、シェルターに座すバイラビに向けて違わず飛んで行く。


「――緊急迎撃」


バイラビの合成音声は大きな爆発音に掻き消された。


壁越しにも分かる強烈な閃光と音。セイヤンを貫いた一撃と同じものだった。



03_勝った ナルギレは勝利を確信し、瓦礫から躍り出る。


そこには左手から電気と熱を放散する、射撃直後のバイラビが立っていた。



「我はナルギレ! イェニチェリの裔、オスマンを再び輝かす者! 悪いがその左手切り落とし、クーヘヌールを貰い受ける!」



ナルギレの信念と口上を、バイラビは待たない。

オートマタは、自らを攻略せしめんとする対象を攻略するのみである。


「敵意を感知。再度の襲撃を予測。砲身の急速冷却および急速荷電開始」


04_再充填 「――――は?」



三度目の、閃光。

しかし今までとは違う、耳をつんざくような高音。


「ナルギレさん!!」


背後からモルゲンロートが叫ぶ。


ナルギレは振り返らない。

フードの上に陽炎を立ち上らせて、そのまま地面へと倒れ込んだ。






05_2キル 伏した頭部から、赤黒い染みが広がっていく。



ナルギレの作戦は間違っていなかった。

正確な投擲とそれを認識したバイラビの防衛反応による誤射。

充電中を待っての攻撃。



「対象の死亡を確認。目標致死レベルを修正。出力引き下げを承認」



過ちは、相手が唯の人形と侮っていたこと。


バイラビが、敵の急襲に際して出力と着弾箇所を即応する判断力を持っていたこと。


「が、学習している……!?」


「速射形態に移行」


機械仕掛けの女神は、ヒトを的確に殺す力加減を覚えてゆく。




 
 



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原案・文章(マイケル)
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