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第25話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります




00_ロゴ

「ヒィッ!?」

頭上にある高枝が焼き切られ、モルゲンロートは恐怖に慄いた。

「あまり前に出るな。再充填時間が短縮されている」

セイヤンとナルギレを倒し、人間の致死量を学習したオートマタ・バイラビは荷電粒子砲の出力を下げた。

質より量を優先したバイラビの荷電粒子砲は揺れ落ちる葉を、異常な気配に躍り出た野兎を次々と射抜いていく。

植物や小動物を消し炭にして尚有り余るエネルギーがその場で爆ぜ、3人が身を潜める廃墟のそこかしこで鳴り響いた。


01_釘付け 「事態は悪化するばかりだ。壁を背にしたまま視界外まで逃げるぞ」

ヴァルターが真後ろを指差す。

モルゲンロートはこれに賛成したが、ミーナは首を縦に振らない。

「悪くない案ですが不可能です。この先は崖になっています。安全に降りるには装備が足りないと判断します。それに壁から遠ざかれば遠ざかるほどバイラビが少し動くだけで発見されやすくなります。崖を攻略しようと立ち往生している内に撃ち抜かれる可能性が非常に高いです」

捜索隊で島の現地測量を担当していたミーナの言葉は真実だった。

「じゃあ運良く立ち去るまでここで息を潜め続けろって言うんですか……? 可能性で言うなら、あの子がこっちに来る可能性だって……!」

「それはそうですが……」

ミーナの弁舌が止まる。否定はできても解決方法はない。

袋の鼠達はバイラビという子猫に睨まれて動けずにいる。



その時、モルゲンロートが懸念することが起きた。

小さな諍いではあるが、バイラビの"耳"は壁越しの人間の存在を感知した。
バイラビは廃墟の影に隠れる人間を視認しようと、ゆっくりと左へ迂回しながら近づいていく。


パキ。


小枝を踏みしめる音を今度は3人の耳が捉え、誰もが口をふさいだ。
距離で言えばあと5歩と言うような、はっきりとした音だった。



ミシ。


顔を見合わせ、恐怖に怯えながら肩を寄せ合う。あと4歩。


ミシ。


お互いの視線が通るまで、あと3歩。




永遠にも勝る数秒。

突然、モルゲンロートが声を上げた。


「誰か、誰かいる!」

モルゲンロートが耳を押さえる。


それは、近づいてきたバイラビに対してではない。

彼女の通信機が、何かのノイズを僅かに捉えた。

しゃがみ込み、周波数をせわしなくいじる。


あと2歩。


ゴーグル越しにモルゲンロートは、目を見開いた。
スピーカー越しに、はっきりと人の会話が聞こえた。




02_照準 『……最後にもう一度聞くが。あれがただのガキだったらマイケル、お前の脳天を撃ち抜くぞ』

『心配すんなバレット。生体反応なし。中心部体温100度超え。踏み締める足の沈み具合からして体重は120キロ近辺だ。それが子供だってんならふん縛ってサーカスに売り飛ばそう』

『ふん、まあいい』


あと1歩。



同時刻、高台。

1人の男が、倒木の陰からゆっくりと引き金を絞った。



バヅン!


強いスラップ音が、誰の耳にも届いた。

バイラビの足元の地面が拳大ほど掬い上がり、木の葉が舞い散る。





03_着弾 『微動だにせずか。確かに機械だな』



“バレット”とも“マイケル”とも別の男の声が、通信に割って入った。

高台の男がスコープから顔を上げる。




04_確認 嗤っているかのように切り欠れている片目の仮面の下から覗く瞳が、少女を冷たく見据えている。

「敵対行為を確認。出力上昇」

少女もまた、弾痕から推定した狙撃手を睨んだ。廃墟に向けられていた手を、ゆっくりと計算した方角に向ける。





05_誰だ 『もうバレてるネ。私の壁は1発しか凌げない。バレット、さっさと降りるしかないヨ』



新たに聞こえてきたのは4人目の男の声。異邦の訛りでヒヒヒ、と卑屈に笑った。

『わかっている。出るぞ』


「誰か、誰かが来ます!」


モルゲンロートが叫んだ。

バイラビの射撃。先ほどより強い爆発音がジャングルにこだまする。

衝撃に揺れ落ちる木葉と砂埃の下方、崖から1人の男が現れた。


フードマントに革の仮面。長尺のライフルを胸に抱きながら、長身痩躯の男が崖を滑り落ちる。


バイラビの左手がそれを追う。



「させるかよ!!」



別方向から声がした。

シェルターの向こう側、物陰から1人の男が飛び出した。

黒いキャスケット帽に単眼ゴーグル。ボロボロのワークエプロンを巻いた青年。
左手には小柄な身長に見合わない巨大なハンマー。

それをゴルフめいてスイングすると、ハンマーが蒸気を吹き出し、加速をつけて地面を強かに抉った。
雪を含んだ泥がバイラビに浴びせかけられる。


「視界不良。退避行動」


センサーに泥を被ったバイラビが射撃を中断する。


腕を下ろし、顔に付いた泥を拭いながら移動しようとするが、動きがそこで止まった。


いつの間にか鎖のついたクナイダートが2条、バイラビのスカートを貫いて地面に突き刺さっている。



「じっとしていろ」



上方からまた別の声。

木を揺らし、蔦を掴み、1人の男がバイラビの眼前に降り立つ。

アビエイターヘルメットを模したフルフェイスの黒いマスク。
翼のように纏ったボロ布の隙間から油に汚れたツナギと、鉤爪を覗かせていている。



「おっとサヴァ、そんなに近づいちゃ危ないヨ。殺すわけじゃないんだから」



降りてきた男の右隣に激しい蒸気が立ち昇り、靄から手品のようにシルエットが浮かび上がる。

漆黒のチェスターコートで身を包み、シルクハットの上に不気味な改造を施されたゴーグルを載せて、2m近い巨漢がゆっくりと姿を現した。

首に巻いた巨大な装置が顔の下半分を覆い尽くしており、丸いサングラスと相まってその表情は見えない。


「お前は相変わらず登場が派手だな、BD」
“サヴァ”と呼ばれた男が巨漢に呼びかける。

「大好きなパイプも我慢して長時間隠れてたからネ。使う蒸気の量も、ネ」
巨体を揺らして“BD”が笑った。


「さあ。遅くなったが、揃ったので自己紹介といこうか」



狙撃手・バレットとハンマー使い・マイケルが2人に追いついた。



「俺たちはこの島最後のパッセンジャー、命知らずの鉄錆傀儡(ラスティパペット)。依頼によりそのダイヤ、頂戴しに来たぜ!」


06_地獄の傀儡 突然現れた4人の闖入者。

ミーナとモルゲンロートは呆気にとられていたが、ヴァルターはこれを攻勢と捉えて歓迎した。

十字剣を構え、2人の静止も振り切り廃墟から躍り出た。


「ちょっと! ヴァルターさん!」

「何者か知らんが礼を言う! 私はヴァルター。目的は同じだが今は共闘と行こう!」



07_対峙 ここは常夏のアンダムに潜む、突然の雪に白く彩られた絶海の無人島。

島の生存者が英国女王のダイヤモンド・クーへヌールを賭け、少女の前に立つ。



しかし何人が立ちはだかろうと、オートマタ・バイラビは動じない。
自らの本文を全うするのみに動く。

足元に穿たれたクナイダートを引き抜くと、乾燥パスタでも扱うかのように手のひらで折り棄てた。



「目標の戦力を再修正。出力最大。殲滅を開始」


 
 



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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ
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