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武装撮影会目次

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スチームパンク武装撮影会とは?

スチームパンク賞金稼ぎ集団ラスティパペットが主催する、撮影会です。
際限のない武装を持ち込み、戦闘あり!死亡シーンあり!の唯一無二の蒸気撮影会を目指しております。
年に1回程度のイベントですが、シナリオや設定をしっかり作り込み、実施しております。
どうぞよろしくお願いいたします。


第1回 スチームパンク武装撮影会(2015年開催)
登場人物動画 登場人物紹介 プロローグ
1回戦 第1試合 第2試合 第3試合 第4試合 第5試合 第6試合 第7試合
2回戦 第1話 第2話
準決勝 第1話 第2話 第3話
決勝戦 最終話


第2回 スチームパンク武装撮影会
(2016年開催)

登場人物紹介&プロローグ


第1話『無題』第2話『息差』第3話『正義』
第4話『余興』第5話『軍人』第6話『開始』
第7話『理合』第8話『名前』第9話『仲間』
第10話『虐遇』第11話『罪咎』第12話『天翔』
第13話『毒香』第14話『傀儡-腕-』第15話『傀儡-梟-』
第16話『傀儡-操-』第17話『傀儡-弾-』第18話『混迷』
第19話『終結』第20話『傀儡-錆-
       





第3回 スチームパンク武装撮影会(2018年開催) 更新中

プロローグ
 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話


      第11話 第12話 第13話 第14話 第15話 第16話 第17話 第18話









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第26話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります


 00_ロゴ 常夏のアンダムに浮かぶ絶海の無人島。

島から湧き出る瘴気と英国女王の秘宝、クーヘヌールから生み出される莫大なエネルギーを携えたオートマタ"バイラビ"が、生存者の前に立ちはだかっている。

対するはダイヤ捜索隊の生き残り、通信士のモルゲンロートと博士のミーナ。
プロイツ帝国のスパイとして同じくダイヤ奪還を目論んでいた捜索隊暗殺チームのヴァルター。
そして突如現れた「ラスティパペット」と名乗る4人。

7対1の多勢を目の前にしてなお、幼い少女然とした姿は微動だにせず、数々の惨劇を潜り抜けた者たちを無機質に睨みつけている。


バイラビは再び左手を上げる。

掌で輝くのは、自らを起動したセイヤンと捜索隊に寝返ったナルギレを一撃のうちに葬った荷電粒子砲の煌めきである。

しかし、バイラビは此度、ゆっくりとその五指を折りたたむ。


隙間を開けた握り拳から強い光が漏れ、バチバチと音を放った。


「散開発射」

全員を一発で仕留めると直感したBDが燻らせていたパイプを極限まで吸い込むと、バイラビの立つ前方に煙を吐き出した。
煙幕と見まごうばかりの紫煙が吹きかけられると共にBDが叫ぶ。

「ギプス!!」
首元のマフラーめいたガジェットから、スプレーのように高温の蒸気が噴射された。
混じり合う煙が硬質の象を現し、壁となってゆく。バレットへの反撃を防いだものと同じ障壁だ。

しかし今再びBDが出現させた障壁は守りでなく攻めの壁。
バイラビの周囲を取り囲むように白い円柱が吹き固められる。


それらは瞬時に崩壊。紙一重遅れて放たれた荷電粒子砲がBDのギプスを低質のチーズの如く穴だらけにした。
接触した瞬間に空間全てを消し飛ばすその性質は、バイラビの鼻先で弾けた。


「自爆を誘ったか! ……やったか!?」

ヴァルターが息をつくも、BDの表情は硬い。

「いや、ダメージを負わせるほど近場には展開できないネェ。煙が散っちゃうから」

もうもうと立ち込める白煙と粉塵の中、砕けた石灰を踏みしめる少女。

「でもまあ……牽制にはなったろうサ」

攻撃は止まった。
7人を狙う掌は下げられていないものの、再び五指が開かれているところからすれば、戦術を決めかねているように見える。



数秒の沈黙の後、口を開いたのはバイラビの方だった。



「対話に移行」




01_釘付け ゆっくりと、その左手が下げられる。
「対話……?」


「抵抗者よ。傾聴せよ。我はバイラヴィー」


今までの機械的な宣言とは異なる口調。

「人間を庇護する知の神にして、人間の望みを叶える渇望の権化」


少女の姿に似つかわしくない、尊大で落ち着いた言葉が、“抵抗者”に告げられる。


今やらないのか、とサヴァが壁越しにバイラビを顎で指す。
しかしバレットは首を縦に振らない。

「俺に任せろ」

ゆっくりと、廃墟から身を乗り出し、頭を垂れた。


「……謁見を願う! 私はラスティパペットの団長、バレット=バレル=トリガー」

ひざまづき、両手を地面に置いて、抵抗の意思がない事を示した。


丸腰でバイラビの前に出るなど、数分前であれば自殺行為に等しい。

バレットの仮面の中で、汗が滴り落ちる。
しかし脳天を即座に撃ち抜けるこの距離においても、バイラビは静観したままだ。


「面をあげろ。盗賊の首領が何の用か」

ゆっくりと、神を謳う少女と目を合わせる。
その表情は達観しているようにも、無気力のようにも見えた。

「御心を知りたい! 我々を攻撃するのは解る。セイヤンを殺したのは何故か!」


バレットは問いかける。

セイヤンは亡国再建のためダイヤを簒奪し、噂を嗅ぎつけた貴族議員を誘き出した。

刺客とともにダイヤを守り、バイラビを起動して捜索隊を全滅させるあと一歩のところまで迫った。

自分を守り、ムガル再建の王手をかけた男の殺害。
人間の心情では理解できない行動原理が、オートマタにあるはずだ。


「起動した男はムガルの再生を願った。我は男の渇望を最大限実現したに過ぎない」


返答は空虚なものだった。

「ムガルの再建はひとりではできない。再建したとて、あの男に国の政は務められない。敵国を再び征服するために我を量産する技術も潰えた」

バイラビは、冷淡な声で告げてゆく。

「我を起動した瞬間が、あの男の絶頂であった。であれば、そのまま生を終わらせることが我の出来るあの男への最大の施しである」


死。

それは欲に溺れ、自分を大きく見積もった者の小さな死。

先遣隊、捜索隊、刺客。
それはセイヤンとて同じだ、とバイラビは答えた。

「しかして、その願いは一側面に過ぎぬ。我がムガル以外の者に渡れば、我を量産する技術のある国が存在すれば、世界全てを武力を以って掌握できるであろう」


「我はムガルで造られた。ニッケルから発生する瘴気とダイヤモンドにより電荷が生まれる事を発見したムガルの民が、兵器として利用するために国を挙げて我を作り、神の名をつけた。しかし我の量産を前にして、ムガルは英国に征服された」

ムガルが帝国の存亡をかけて開発した兵器。それがバイラビであった。

英国がこれを察知し、ムガルを制圧して全てのダイヤモンドを接収。
インド亜大陸は東インド会社の監視下のもと、新たなるダイヤモンドの発掘のため、英国の領土となった。


バレットは理解した。


「渇望は承認された」


やはり少女は神では無く、オートマタだ。


「志を同じくする次のムガルの民が現れるまで、幾星霜であろうとこの島で我自身とクーヘヌールを護り続ける」


次のムガルの民など、現れるだろうか。
可能性がゼロであろうと、導き出された判断を実行し続ける機械。

それがムガルでバイラヴィーと呼ばれた神、オートマタの全てであった。



02_提案 廃墟でバレットを見届ける男たちもまた、ムガルとバイラビの真実を聞いていた。

ヴァルターは謁見の影で、マイケルに話しかけた。

「このままではまずいな」

「ンな事わかってるわ! でもこれ以上前に出ても死体が増えるだけだぜ」

マイケルは呆れた素振りで嗜めるが、ヴァルターは至極真面目だった。

「だから協力してくれないか。奴の動力源を破壊する」



バイラビの前のバレットがまた、声を絞り出した。

「……畏れながら再び問おう! 我々がこの島を立ち去ることは可能か!」


バレットの強い語気に反応するかのように、バイラビは一層冷酷に答える。

「能わず。セイヤンはムガルの民に能わず。そして貴様らもまた、ムガルの民に能わず」

「我を知りながらムガルを護れぬ者も、ムガルを脅かす者も、全てこの島から出ること能わず。ここで死ね」



バイラビは、決定を覆さない。
神による死刑宣告。


「な~にがあたわずだ!! こんなとこで死ぬかよバーカ!!!!!」

張り詰めた空気を打ち破る声がジャングルに響く。

地面を叩いたハンマーの反動を使って、マイケルがパチンコ玉のように飛び出してきた。


「マイケル!!」

バレットが叫んだ。




03_おとり ヴァルターの提案とはこうだ。
マイケルがバレットとバイラビの死角から飛び出し、注意を逸らす。
バイラビがマイケルを狙うのを見計らい、ヴァルターがダイヤが取り付けてある装置を破壊する。

「要するにただの囮じゃねーか! バレットの代わりに死ねって事かよ!」

「案ずるな。今まで見てきた限り、奴が自分の行動を変更するには宣言と多少の準備時間が必要になる。気を逸らしている間で攻撃されることはない。むしろ、その後に出る私がやられるだろう」

実際、それは真実であった。




「戦闘状態への再起動」

バイラビが再び左手を持ち上げる。吹き飛んだマイケルに照準を合わせる背後を、さらにヴァルターが追う。

「ここだっ!!」

ツーハンドソードがバイラビの胸元にある装置とダイヤとの間に突き立てられる。
ヴァルターが剣をひねるが、剛性の高いダイヤモンドではびくともしない。

ダイヤに挟まれ行き場のない応力は剣と装置に跳ね返り、代償として剣は鋭い音を立てて割れた。

しかし、ダイヤを固定する蓋が歪むのをヴァルターは見逃さなかった。

隙間に指を入れ、力任せに引き剥がす。




04_開けたぞ 火花を散らしながら、蓋が外れる。
大人の握り拳ほどの大きなダイヤが露出した。

ヴァルターがダイヤそのものに手を掛けようとするが、バイラビはそれを許さない。

既に少女の掌はヴァルターの腹部に押し付けられていた。



「発射」



05_ぬふう ゼロ距離からの一撃。











06_死んだ ヴァルターが倒れる。
雪を赤く染めて、絶命した。

緊急的な防衛行動だったのだろう。爆発がバイラビの左手にも多少のダメージを与えたのか、バチバチと稲妻が迸っていた。



「何人もこの島から出ること能わず。これは神による殲滅である」


 



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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ

第25話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります




00_ロゴ

「ヒィッ!?」

頭上にある高枝が焼き切られ、モルゲンロートは恐怖に慄いた。

「あまり前に出るな。再充填時間が短縮されている」

セイヤンとナルギレを倒し、人間の致死量を学習したオートマタ・バイラビは荷電粒子砲の出力を下げた。

質より量を優先したバイラビの荷電粒子砲は揺れ落ちる葉を、異常な気配に躍り出た野兎を次々と射抜いていく。

植物や小動物を消し炭にして尚有り余るエネルギーがその場で爆ぜ、3人が身を潜める廃墟のそこかしこで鳴り響いた。


01_釘付け 「事態は悪化するばかりだ。壁を背にしたまま視界外まで逃げるぞ」

ヴァルターが真後ろを指差す。

モルゲンロートはこれに賛成したが、ミーナは首を縦に振らない。

「悪くない案ですが不可能です。この先は崖になっています。安全に降りるには装備が足りないと判断します。それに壁から遠ざかれば遠ざかるほどバイラビが少し動くだけで発見されやすくなります。崖を攻略しようと立ち往生している内に撃ち抜かれる可能性が非常に高いです」

捜索隊で島の現地測量を担当していたミーナの言葉は真実だった。

「じゃあ運良く立ち去るまでここで息を潜め続けろって言うんですか……? 可能性で言うなら、あの子がこっちに来る可能性だって……!」

「それはそうですが……」

ミーナの弁舌が止まる。否定はできても解決方法はない。

袋の鼠達はバイラビという子猫に睨まれて動けずにいる。



その時、モルゲンロートが懸念することが起きた。

小さな諍いではあるが、バイラビの"耳"は壁越しの人間の存在を感知した。
バイラビは廃墟の影に隠れる人間を視認しようと、ゆっくりと左へ迂回しながら近づいていく。


パキ。


小枝を踏みしめる音を今度は3人の耳が捉え、誰もが口をふさいだ。
距離で言えばあと5歩と言うような、はっきりとした音だった。



ミシ。


顔を見合わせ、恐怖に怯えながら肩を寄せ合う。あと4歩。


ミシ。


お互いの視線が通るまで、あと3歩。




永遠にも勝る数秒。

突然、モルゲンロートが声を上げた。


「誰か、誰かいる!」

モルゲンロートが耳を押さえる。


それは、近づいてきたバイラビに対してではない。

彼女の通信機が、何かのノイズを僅かに捉えた。

しゃがみ込み、周波数をせわしなくいじる。


あと2歩。


ゴーグル越しにモルゲンロートは、目を見開いた。
スピーカー越しに、はっきりと人の会話が聞こえた。




02_照準 『……最後にもう一度聞くが。あれがただのガキだったらマイケル、お前の脳天を撃ち抜くぞ』

『心配すんなバレット。生体反応なし。中心部体温100度超え。踏み締める足の沈み具合からして体重は120キロ近辺だ。それが子供だってんならふん縛ってサーカスに売り飛ばそう』

『ふん、まあいい』


あと1歩。



同時刻、高台。

1人の男が、倒木の陰からゆっくりと引き金を絞った。



バヅン!


強いスラップ音が、誰の耳にも届いた。

バイラビの足元の地面が拳大ほど掬い上がり、木の葉が舞い散る。





03_着弾 『微動だにせずか。確かに機械だな』



“バレット”とも“マイケル”とも別の男の声が、通信に割って入った。

高台の男がスコープから顔を上げる。




04_確認 嗤っているかのように切り欠れている片目の仮面の下から覗く瞳が、少女を冷たく見据えている。

「敵対行為を確認。出力上昇」

少女もまた、弾痕から推定した狙撃手を睨んだ。廃墟に向けられていた手を、ゆっくりと計算した方角に向ける。





05_誰だ 『もうバレてるネ。私の壁は1発しか凌げない。バレット、さっさと降りるしかないヨ』



新たに聞こえてきたのは4人目の男の声。異邦の訛りでヒヒヒ、と卑屈に笑った。

『わかっている。出るぞ』


「誰か、誰かが来ます!」


モルゲンロートが叫んだ。

バイラビの射撃。先ほどより強い爆発音がジャングルにこだまする。

衝撃に揺れ落ちる木葉と砂埃の下方、崖から1人の男が現れた。


フードマントに革の仮面。長尺のライフルを胸に抱きながら、長身痩躯の男が崖を滑り落ちる。


バイラビの左手がそれを追う。



「させるかよ!!」



別方向から声がした。

シェルターの向こう側、物陰から1人の男が飛び出した。

黒いキャスケット帽に単眼ゴーグル。ボロボロのワークエプロンを巻いた青年。
左手には小柄な身長に見合わない巨大なハンマー。

それをゴルフめいてスイングすると、ハンマーが蒸気を吹き出し、加速をつけて地面を強かに抉った。
雪を含んだ泥がバイラビに浴びせかけられる。


「視界不良。退避行動」


センサーに泥を被ったバイラビが射撃を中断する。


腕を下ろし、顔に付いた泥を拭いながら移動しようとするが、動きがそこで止まった。


いつの間にか鎖のついたクナイダートが2条、バイラビのスカートを貫いて地面に突き刺さっている。



「じっとしていろ」



上方からまた別の声。

木を揺らし、蔦を掴み、1人の男がバイラビの眼前に降り立つ。

アビエイターヘルメットを模したフルフェイスの黒いマスク。
翼のように纏ったボロ布の隙間から油に汚れたツナギと、鉤爪を覗かせていている。



「おっとサヴァ、そんなに近づいちゃ危ないヨ。殺すわけじゃないんだから」



降りてきた男の右隣に激しい蒸気が立ち昇り、靄から手品のようにシルエットが浮かび上がる。

漆黒のチェスターコートで身を包み、シルクハットの上に不気味な改造を施されたゴーグルを載せて、2m近い巨漢がゆっくりと姿を現した。

首に巻いた巨大な装置が顔の下半分を覆い尽くしており、丸いサングラスと相まってその表情は見えない。


「お前は相変わらず登場が派手だな、BD」
“サヴァ”と呼ばれた男が巨漢に呼びかける。

「大好きなパイプも我慢して長時間隠れてたからネ。使う蒸気の量も、ネ」
巨体を揺らして“BD”が笑った。


「さあ。遅くなったが、揃ったので自己紹介といこうか」



狙撃手・バレットとハンマー使い・マイケルが2人に追いついた。



「俺たちはこの島最後のパッセンジャー、命知らずの鉄錆傀儡(ラスティパペット)。依頼によりそのダイヤ、頂戴しに来たぜ!」


06_地獄の傀儡 突然現れた4人の闖入者。

ミーナとモルゲンロートは呆気にとられていたが、ヴァルターはこれを攻勢と捉えて歓迎した。

十字剣を構え、2人の静止も振り切り廃墟から躍り出た。


「ちょっと! ヴァルターさん!」

「何者か知らんが礼を言う! 私はヴァルター。目的は同じだが今は共闘と行こう!」



07_対峙 ここは常夏のアンダムに潜む、突然の雪に白く彩られた絶海の無人島。

島の生存者が英国女王のダイヤモンド・クーへヌールを賭け、少女の前に立つ。



しかし何人が立ちはだかろうと、オートマタ・バイラビは動じない。
自らの本文を全うするのみに動く。

足元に穿たれたクナイダートを引き抜くと、乾燥パスタでも扱うかのように手のひらで折り棄てた。



「目標の戦力を再修正。出力最大。殲滅を開始」


 
 



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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ

第24話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります







00_ロゴ


英国女王のダイヤ「クーヘヌール」捜索隊の生き残り、通信士モルゲンロートと博士ミーナ。


捜索隊暗殺の使命を負いながらも、自らの信念からセイヤンを裏切ったイェニチェリの子孫、ナルギレ。


スパイとして捜索者暗殺部隊に潜入し、クーヘヌールの奪取を目論んでいた帝国軍人、ヴァルター。


4人は崩れそうな廃墟の壁に身を潜めていた。


01_篭城 薄壁を隔てて4人を見つめるのは、小さな少女。


ゴシックな意匠の黒いドレスを纏い、少女は左手をこちらに向けている。


4人が手に入れようとしていたダイヤモンドは、瘴気から電荷を得る宝玉であった。


島から湧き出る無尽蔵の瘴気を電力に換えたそのダイヤで駆動する自動人形(オートマタ)。

名を、“バイラビ”と言う。



傍らには、体躯の中央に大きな穴を開けた死体。

島のコーディネータを装い、ファラメルディアスたち捜索隊を暗殺し続けた暗殺部隊の首魁。

今は無きムガルの民、セイヤンであった。


自らが起動した自動人形によって腹を抉り取られ、死に果てた。






02_遺体 「あのオートマタ、まさか荷電粒子を撃ってくるとはな」


首の汗を拭いながらヴァルターが瞠目する。

耳馴染みのない“荷電粒子”の単語に、ミーナのみが反応した。


「荷電粒子!? ではあの爆発は対消滅なのですね」


「ああ、あの閃光と爆発は間違いない。だがどの国も兵器としての実用段階に漕ぎ着けられていないはず……まさかムガルが隠し持っていたのか」


「信じられません。あの小さなオートマタの内部に粒子加速器があるとすれば技術的特異点並みの機構です」


信じられない、と言いながらもミーナの目は驚きと関心に満ちていた。

学術の徒として、未知の技術との遭遇は命の危険に勝る興味なのだ。


話について来られないナルギレが諫めるように2人の会話に割って入った。


「あー、楽しそうなところ悪いが。今起こった事について喋ってるなら俺たちにも分かるような言葉で話してくれないか」



「オートマタの左腕から射出された荷電粒子は対象物に接触するまで直進します。そこでエネルギーが爆発して粒子が対消滅を起こすことで……」


詳細を求められたと意気込むミーナの解説も、空回りするばかりだ。


「つまりどういうことだよ!」


やれやれ、とヴァルターが助け舟を出した。


「あの子の左手は莫大な電気エネルギーを光の速さで発射する大砲になっている。当たればどんな物質も分解されて消し飛ぶ。あいつの腹のように、だ」


ヴァルターがセイヤンの亡骸を指さす。


「唯一の救いが、あれだけ強力でも貫通はしないということだ。何か物にぶつかればその場で爆発が起きる。あの被害からすれば……直径30センチと言ったところか」


「こんな瓦礫の薄壁一枚でも、攻撃されるまでは俺たちを守ってくれるわけだな」


何百年経ったかも知らぬ廃墟の壁が、身の安全を保証してくれている。


「ああ、だからこそあの子はこちらを攻撃して来ない。電荷の再充填には幾らかの時間が必要なはずだ。無駄打ちを避けたがっていると言える」



「しかしずっとここにいたんじゃあジリ貧だ。腹も減れば眠くもなる人間と正確無比な殺戮人形。おまけにこの島にいる限りゼンマイは自動で巻かれ続けるんだろう? 先に隙を見せるのがどちらかは俺でも分かる」



誰もナルギレの言葉を否定しない。


バイラビは4人に向け左手を掲げたまま微動だにしていない。


お互いの視線は通ってはいない。

しかし時折風の鳴らす葉擦れの音、それ以外何も無い静寂が事態の膠着を証明していた。



「俺だってイェニチェリの子だ。馬上訓練は受けている」


ナルギレがマスク越しに笑って見せた。


「騎射をする時、一番大事なのは相手との距離を正確に読むことだ。止まっている的なぞ、目を瞑ってでも撃ち抜ける」



言うが早いか、ナルギレは崩れた岩壁から拳大の石を掴んで放り投げた。



瓦礫の壁越しに放たれたその一球は大きな放物線を描き、シェルターに座すバイラビに向けて違わず飛んで行く。


「――緊急迎撃」


バイラビの合成音声は大きな爆発音に掻き消された。


壁越しにも分かる強烈な閃光と音。セイヤンを貫いた一撃と同じものだった。



03_勝った ナルギレは勝利を確信し、瓦礫から躍り出る。


そこには左手から電気と熱を放散する、射撃直後のバイラビが立っていた。



「我はナルギレ! イェニチェリの裔、オスマンを再び輝かす者! 悪いがその左手切り落とし、クーヘヌールを貰い受ける!」



ナルギレの信念と口上を、バイラビは待たない。

オートマタは、自らを攻略せしめんとする対象を攻略するのみである。


「敵意を感知。再度の襲撃を予測。砲身の急速冷却および急速荷電開始」


04_再充填 「――――は?」



三度目の、閃光。

しかし今までとは違う、耳をつんざくような高音。


「ナルギレさん!!」


背後からモルゲンロートが叫ぶ。


ナルギレは振り返らない。

フードの上に陽炎を立ち上らせて、そのまま地面へと倒れ込んだ。






05_2キル 伏した頭部から、赤黒い染みが広がっていく。



ナルギレの作戦は間違っていなかった。

正確な投擲とそれを認識したバイラビの防衛反応による誤射。

充電中を待っての攻撃。



「対象の死亡を確認。目標致死レベルを修正。出力引き下げを承認」



過ちは、相手が唯の人形と侮っていたこと。


バイラビが、敵の急襲に際して出力と着弾箇所を即応する判断力を持っていたこと。


「が、学習している……!?」


「速射形態に移行」


機械仕掛けの女神は、ヒトを的確に殺す力加減を覚えてゆく。




 
 



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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
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シュウ

第23話

本記事は2018年1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります






 
00_ロゴ
ダイヤ捜索隊、ミーナの首元にナイフを突きつけ、じりじりと下がるセイヤン。

隙を伺い、詰め寄るナルギレとヴァルター、そして通信士のモルゲンロート。


しかし、追い詰めているわけではない。

状況を打開できないまま、一定の距離を近寄れずにいるだけだ。


01_追い詰めたぞ そして5人は、セイヤンの導くまま、広場へとたどり着く。




広場の中央には、それまでの遺跡やジャングルでは見られなかった、鉄と樹脂で作られた無気味な構造物が置かれていた。

それは、寂れたシェルターのようにも、朽ちた巨鳥の卵のようにも見えた。




02_シェルター そしてその上に、小さな子供。

静かに体を横たえたまま、眠っているように見える。

息をしている気配はない。




03_寝ている セイヤンはミーナを拘束していた腕を解き、モルゲンロートに向かって突き飛ばした。


「きゃっ!」

「だ、大丈夫ですか?」



04_大丈夫か 介抱するモルゲンロートを庇う位置に立ちながら、ナルギレはセイヤンに詰め寄った。


「抵抗は諦めたのか? ならば大人しくクーへヌールを渡せ!」



セイヤンは腰に提げた小箱を開いた。

取り出されたのは、ブリリアントカットに青く煌くダイヤモンド。




05_自慢 それは紛れもなく、英国を照らし西洋諸国を統べる象徴。

子供が玩具を自慢するかのように掌で弄んでいたセイヤンが、にわかに激昂した。


「誰が貴様らに渡すものか!」



06_誰が渡すか 「英国から総てを奪われたムガルの民の心が分かるか!」


「……!!」


全員が口を噤んだ。

1858年、インド諸侯の相互の争いに積極的に介入し最終的に全ての戦争に勝利した英国は、軍事力で圧倒したまま総督を据え、英国領として独占的にインドを“買い取った”。

一時は大陸全土に版図を広げる勢いだったムガルの滅亡は誰もが知るところだった。


「セイヤンさん……。あなたはムガル帝国の人だったんですね」

ミーナが口を開く。



「そうとも。私は東インド会社のスィパーヒー(傭兵)にして、ムガル反乱政府の暗殺部隊長、セイヤン。セイヤン・ハーンだ」



セイヤンの真の名に、瞠目するナルギレ。


「ハーン……!? お前、まさかバフト・ハーンの一族か!?」

「バフトハーン……?」


事情の飲み込めないモルゲンロートにヴァルターがフォローを入れる。

「バフト・ハーン……インドで起こった大反乱、セポイの乱の首謀者、反乱政府の総大将だ」


「紹介ご苦労。いかにも。このダイヤはインド大反乱の折、女王暗殺のため英国に渡った際に奪い取ってきたのだ。ガラス玉とすげ替えてな」


「ダイヤは奪えたが、暗殺も反乱も……失敗に終わった。皇帝は流刑され、あの女王は今も私たちの美しいモスクや廟堂を破壊し、金糸の織物を売り捌き、民が餓えに喘ぎながら育てた紅茶を飲んでいる」




07_ドヤア セイヤンはクーへヌールを握りしめ、高々と拳を挙げた。

それは個人の怒りでなく、滅ぼされた亡国の慟哭そのもの。


「ならば! ならばひとつくらい返してもらおう!! ああ! 誇り高きパンジャーブの大地から産まれた光の山、クーヘヌールを!!」

幾人もの命を落としてもファラメルディアスが追い求めた捜索対象。

人質を開放し、刃を突きつけられながら、それを捜索隊の前に見せつけてなおセイヤンは動じない。

むしろ、王手を掛けたのが自分であるかのように笑っている。




08_どうする気だ 「それをどうする気だ!!」


「嘆かわしい! 救いようのない無知どもめ! このダイヤが放つ“光の山” が老いさらばえた女王が持つべき物ではない証を見せてやる!」

朝日に照らされたダイヤが一際に青く輝く。


その明滅に呼応するかのように、寝かされた少女の胸元にあるネックレスのような意匠が動き出す。



セイヤンは少女に向き直ると、ダイヤをそっと胸元に置いた。

ネックレスの爪が持ち上がり、静かに掴んで、ダイヤはあるべき場所に収まった。


09_装着 ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ…………



駆動音が辺りに響き渡ると、白磁のような肌にうっすらと紅が差され、少女はゆっくりと体を持ち上げた。


「自動人形(オートマタ)……?」


ミーナがひとりごちた。


10_むくり 生気の感じない口元と、半分を鉄機のゴーグルに覆われ、眼差しの分からない顔は沈黙をたたえたまま。

丁重に飾られた人形のように、静かに正面を向いていた。

しかし、歯車じかけのオートマタとは一線を画す、滑らかで無駄のない動きだった。



「は、よく躾けられた子供だな。そんな玩具を動かすために女王からダイヤを奪ったのか?」




「いやナルギレ、違う。核電金剛石の本当の力は……!」


11_違う 「流石ヴァルター……いや当然か。探し物の本当の意味ぐらい知っているよな!」


「その通り、この人形はダイヤに動かされている。そしてこの島の地殻には大量のニッケルの同位体が含まれている! そのニッケルが出す瘴気を電荷として蓄えているのがこのクーへヌールという訳だ」



「島の瘴気を存分に溜め込んだクーヘヌールを動力源とするこの小さな体には今、9000億ジュールに相当するエネルギーが溜まっている」


「……9000億!?」


9000億ジュール。

この産業革命時代にあってまだ実用段階にない最新の爆薬、トリニトロトルエン200トン分だ。


この島を10回灰塵に帰してなお余る熱量が、小さな少女の胸元に蓄えられている。


「それこそが英国女王の笏に収まるような飾り物ではない、クーヘヌールの真価なのだよ。大掛かりな石炭と蒸気の時代は終わりだ!! 我々はこの島から無限のエネルギーを得て、世界を支配する!!」


少女は産業革命を起こした蒸気機関を優に越える技術特異点であり、破壊兵器であった。
そして英国の秘宝、クーヘヌールはそのエンジンとして盗まれたのだった。


「電気人形、汝の名は”バイラビ”! それはあらゆる望みを叶える女神! さあ! ムガルを滅ぼした全ての敵を! 英国を! 世界を悉く焼き尽くすのだ!!」


12_第3部完 「認証」



少女が



小さくつぶやいて



ゆっくりと



左手を挙げる。




13_発射
掌がダイヤの発する、同じ青に色づいた瞬間。




影すら包み込む眩い光が爆発し、全員の視界が奪われる。

網膜を焼き切らんばかりの光の中で感じられたのは、落雷のような轟音と爆風。




反射的に目を背けた4人が再び顔を上げると、そこには変わらずセイヤンが立っていた。



だが



セイヤンの胴体、その中央に大きな空間があった。

14_大穴 丸く切り取られたかのように人体のそこにあるべきあらゆる筋肉、臓器、骨が無い。


「……ぁ?」



断末魔をあげる暇も与えられず、糸の切れた人形の如く崩れ落ちる。


バイラビと呼ばれた機械人形の左手からは未だバチバチと電気が迸り、放熱と思われる陽炎が立ち昇っていた。


バイラヴィー。

それはインド神話に登場する十大女神マハーヴィディヤーの一柱。
輝く広大な知識を持つ者と崇められる女神の中でも、破壊と創造を司る。

創造のために手段を選ばない破壊を起こす、無慈悲な女神である。



「ヒィッ……!!」


何が起こったかを認識したモルゲンロートが口元を押さえる。


バイラビがその声に4人の方を向く。

たった今存在を認識したかのようにゆっくりとした動作で、再び左手を持ち上げた。




「荷電再開」



15_逃げろ 「まずいぞ!! 退け!!」





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原案・文章(マイケル)
記事・管理(バレット)


カメラマン(以下の皆様の写真を掲載させて頂いております)
せーゆ
へい
シュウ