第5話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります





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―本隊上陸 2ヶ月前―


「うぅ・・・苦手だこの寒さ・・・」
雪柳は走って緩んだケープをいま一度締めなおした。
森の生き物は突然の雪に怯え、足跡すら見かけない。

01_木の上 木の上から、島を見回してみる。獣人の身には容易いことだ。

風に匂いは無く、木々は急激な降雪に色を失いつつあった。


そしてこの雪は、島の中央に向かってますます深くなっていくようだ。


故郷に降る雪とはまるで違う。体感の寒さだけでなく、妙な「寒気」が産毛を逆撫でする。
そしてそれ以上に、何か嫌な予感を雪柳は確かに感じ取っていた。


「――動くな」
木からするすると降りたところで、背後から急に野太い声がした。

02_発見 「私はヴァルター・フォン・クロンベルク。帝国軍人である。命令により排除する」
ヴァルター、そう名乗る男が剣を構えた時には、雪柳はその身を反転させ大きく飛びずさった。

「疾いな。だがこちらは名乗っている。そちらの名と目的を」
雪柳はヴァルターの言葉を待たず襲い掛かった。

ガギャリとガントレットが軋み刃こぼれが小さく発火する。その閃光が消えるより速く二人は二刃、三刃と斬り結んだ。
雪柳の眼光が糸を引く。仰け反った体躯をばねにしてもう一撃を加える。

03_戦闘 戦闘には自信があった。雪柳は自警団でも一番のミリティア・ガントレット使いだった。
カミソリの如き先端のクローは切れ味を失いやすい。
しかしその度にガントレット後部のバルブが自動的に開き、こぼれた刃を修復することで分厚い毛皮を、太い骨をガーゼのように裂いていく。


しかし全ての攻撃は、ヴァルターの両腕とそこから伸びる無骨なロングソードによって去なされ、スケイルアーマーにすら届かない。

(肉体に傷がつけられないなら、数で圧倒して逃げよう・・・・!)




斬撃が三十を越した後、先に体勢を崩したのは雪柳のほうだった。

04_逡巡 すかさずマウントを取るヴァルター。逆手に持った剣が喉元にむけ振りかぶられた。


「……っ」


一瞬の逡巡。雪柳は機を逃さなかった。

「ぐるるるああああああああああああ!」


ガントレットの廃熱を顔に押し当て、肘でヴァルターを突き飛ばした。

05_脱兎 「待てっ!……いや……」
ヴァルターは突き出した手を下ろすと、その場に立ち尽くした。




バーグリヒト奪取計画。

祖国の言語で【山の光】と呼ばれた幻の宝玉。

鉱石採掘場で偶然発見された大粒のダイヤと思われていたそれは、ただの宝石ではなかった。

・・・・・
核電金剛石――そんな小さな石ひとつに熱を上げて、帝国は今再び略奪者にならんとしている。



騎士道とは守るべき者のために戦うはずではないのか。

宝玉の奪取と解析は帝国の科学力を飛躍させるといわれているが、その斥候という命のために歳若い獣人を殺すことがあって良いのか。それはもう蛮勇ではないのか。

プロイツはもはや元の大公国のみならず、世界そのものから乖離しはじめている。




06_祈り 優秀な戦果を挙げた名誉ある血族にのみ許される、紅の十字兜。

それは神の受難と国の勝利を顔に刻まれたことを意味している。


「主よ、祖国よ。貴方は邪まな者の悪意を砕き正義を守るために剣を使うのを、私にお許しになった。
どうかこの下僕のこころを善に向けさせ、いかなる剣も、不正に他人を傷つけるためには決して使わせないように導きたまえ」

ヴァルターはゆっくりと、無骨な剣を十字に相対させて祈った。











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原案・文章(マイケル)
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第4話

本記事は1月28日に行われた第3回スチームパンク武装撮影会のストーリーになります










???の独白 ―本隊上陸 2ヶ月前―


もうすぐ島が見えるころ、というところでフードの男が聞いてきた。
「なあ、アンタはどこでこの話を聞いたんだい」


私は、酒場と答えた。

「酔っ払いの与太話を信じてここまで来るとは、アンタも相当肝が据わった人だな」

私は、はにかんで何も答えなかった。

ヴァイスと名乗るこの男は、この中では一番の経験者のように見えた。
両腕の碗甲からは、細身の刃が見える。

「そうね、最後の港でこのボロ船を見たときは引き返そうと思ったもの」


私が口を開かずにいると、その空白に北欧の顔立ちをした女が話に乗ってきた。

ナタリアと名乗るこの女もまた、戦闘に優れているように見えた。
腰に提げた鎖鎌の分銅は護身用のサイズを大きく超え、囚人の足枷じみた質量を主張している。

私は、名前から大公国人かを訪ねた。

「育てた人がロシア人だったからナタリアと名乗っているけど、産まれはプロイツなの。あなた、学があるのね」



この「ボロ舟」には、私とヴァイスとナタリアの他に4名が乗っている。
銀髪の獣人、オスマン系の顔立ちの少女、ペストマスクをつけた呪術師風の男、髭面に革の仮面とウェディングドレスを身につけた中年男。

「他の奴らが気になるかい?」

私は、まあねと答えた。

「犬耳・・・雪柳、だっけか?あいつは優しいが気弱そうなヤツだ。キギとかいうエスニックなガキも悪いやつじゃない。だがあの2人は俺から言わせりゃ足手まといだ」

「ペストマスクの野郎、アダムは……ありゃ変人だ。頭は良さそうだが、話が通じない。一番うしろの、あの見るからに女装のオッサンは……俺もまだ話しかけてない。武器も持たずに何しに来たんだ?」

私は、なるほどと相槌を打った。
悪くない観察眼だが最後の男からは粗製火薬の臭いがする。丸腰ではないはずだ。
と、その女装男がにわかに立ち上がり、船が小さく傾いだ。両眼の遠眼鏡をかざして一言、綺麗ねと呟いた。

「マジかよ、雪が降ってるじゃねえか!」

私は、珍しいこともあるものだと返した。





00第4話ロゴ



係船柱に小さなボートをつなぎ、各人が荷物を背負い込んだ。




01踏みしめる ブーツソールが雪と泥に沈み込む。南国には稀有な寒さが肌を刺す。だが、そんな天候が捜索隊の意気を止める筈もない。



02先遣隊 捜索隊が依頼主であるファラメルディアス=フォン=ザクローゼン貴族議員から与えられた任務は島の地質調査および文明の同定であった。その中には「同定のために必要と判断した現地物品の回収」が含まれている。


そしてこれこそが50年前に何者かによって持ち去られた大英帝国のダイヤ、クーヘヌールの奪還であることを、捜索隊の誰もが知っていた。



03アダムとヴァイス 「感じるぞ。マハトマ、偉大な魂の!その迸りが!」
アダムが諸手を挙げ、全身を振るわせた。

「まさか同意見とは思わなかった。そのとおりだよアダム。ここは無人島だがごく最近に誰かが来ている……こりゃあ与太話じゃなさそうだ」

ヴァイスは船の上で私に自分が腕利きのトレジャーハンターであることを教えてくれた。
多くの経験と直感が、彼を後押ししているのだろう。

「宝玉はまさしくこの地に在ろう。とは言え認識ができねば真理に至れぬ。ああ、一刻も早くこの目に焼き付けたい」

アダムは山の向こうを杖で指差し、ヴァイスもそれを目で追っていた。





04ナタリアヴァイス 「こんな処まで来たんだもの、無駄足じゃ帰れないわ。絶対に宝玉をネックレスにしてやるんだから」
「強欲なヴィクトリア女王も居たもんだ」
2人は顔を見合わせ、微笑んでいた。






 05ナタリアジェーン 「貴方はどうなの、もし宝玉が見つかったらどうしたい?」
ナタリアが女装男に聞いていた。
「ジェーンよ。私は私を殺した犯人を捜しているだけ。捜索の足掛かりになる報奨金が貰えればそれでいいわ」

「意外に無欲なのねジェーン、貴方が見つけたら私が報奨金の倍払って買い取ってあげる」




06ヴァイスの提案 「・・・なあ、確かにそうだ。ここに本当にヴィクトリア女王のダイヤがあるのなら、単なる地質調査にしては破格の報奨金も端金だ」



捜索隊は、当たり前の結論に達した。
これから全員が探す物は、一介の貴族議員が支払う報奨金よりも遥かに価値のある宝であるという事実に。



07map.jpg ヴァイスが地図を広げ、全員がそれを覗き込む。

「誰かが一番にこの島に眠るお宝を見つけ出し、ここに戻って、この船でひとりで島を脱出する」

ヴァイスは地図の西、現在地である岬を指差した。

「置いていかれた者は依頼主の救助を待ち、勝者はその間に行方をくらませるってことね」

「そのとおり、負けたら恨みっこなしだ。どうだみんな?」

ヴァイスが問いかける。にわかに張り詰めた空気に戸惑う者は居ても、反論する者は居ない。

「こうなることは内的直観が告げていた。もとよりそのつもりである。無論、宝玉を手に入れるためならその勝負に喜んで参加しよう」





08雪柳キギ  「そしたら報酬を6等分って契約は……」
雪柳がつぶやきながらポケットをまさぐっている。

「あんた何言ってんの?ここには7人いるじゃない」

キギは円弧を描きながら自分自身、雪柳、私、ジェーン、ナタリア、ヴァイス、アダムを指差した。
確かに、ここにいる人数で山分けすれば7等分が正解である。

「あれ、じゃあ貰った書類は間違いだったのか……」

キギは雪柳のポケットに手を突っ込み、引き抜いた書類をそのまま破り捨てた。

「記載にミスのある契約書なんか失効よ。勝ち取った1人が直接依頼主と現物を以って交渉すればいいの」







09背中 「ここから先はお互いがライバルだ。俺は林を抜けて祠に行かせてもらう!今生の別れになるだろう。じゃあな!」

それぞれが口々に捜索する方面を宣言し、走り出していく。

私は、沿岸から当たろうと言い、全員の背中を見送った。







私は船着場に戻ると、ボートのロープを係船柱から外し、その先にバケツをくくりつけて沖に向かって放り投げた。

バケツが離岸流を捉え、沖に向かってロープがピンと張った。
舳先を強く蹴り出すと、勝者の舟は誰をも載せず、ゆっくりと沖へと進んでゆく。

ポケットから無線機を取り出す。


「掛かったぞ。全員殺せ」


私は、そう言った。















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第3話

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第三話 襲撃
「我は鏘園。暗明の虚無僧なり。この島にまとわる一切の業を断つために居る」




01虚無僧名乗りを上げる 赤銅色に鈍く光る天蓋。鉄糸で彩られた法衣。そして両腕に携えるは身の丈に及ぶほどのガットリングゴン。
巌のように動かず、視線は見えず。しかし只ならぬ殺意がヘンゼルの産毛を瞬間的に逆撫でた。



「全員反転!走れっ!」



額の先から突き出るような号令を出すヘンゼル。
虚無僧の出で立ちに呆気にとられていた他の者も我に返り一目散に来た道へ走り出した。

02みんな逃げてろ ヘンゼルは全員の後姿の射線を遮りながら、それでも再び口角を上げて敵を挑発する。
「ひゅう、物騒なモノぶら下げて坊さんとは、仏教ってのは随分と乱暴なんだな」

虚無僧は動じず。逆光のシルエットを崩さないまま、禍々しい得物の口をこちらに向けた。

「暗明では三具を以って虚無僧と成る。天蓋、袈裟、そして法具である。この転経奇環砲が汝の業を巻き取ろう」


03なるほど 勢いよく数珠を引くと初爆を起こし、砲塔がギャリギャリと回転し始めた。


「如是我聞、汝等衆生、当信是称讃、不可思議功徳、一切諸仏、所護念経」


鏘園が片手で印を組み、念仏を唱える。


「なるほど、その臭いだ。先遣隊の6人を殺したのもその物騒なガットリングか」


黒い排煙を撒き散らし、砲身が唸りを上げていく。




「否。我は此処で一人の天狗に経を読んだに過ぎぬ。あとの者は――」




砲塔に刻まれた経文が赤熱しだした。








04全員逃走中




 ・・・・・・・・・・・・・
「それぞれが持ち場にて殺した」














05なんだと 「……んだと……!?」










8人がヘンゼルに背を向けて走り出してから数十秒、狂ったドラムロールのような発砲音が森をつんざいた。

「ヘンゼルさんが!!」
モルゲンロートが叫んだ。


「こんなときの用心棒だろうが!振り返るな!」


ファラメルディアスが泣き言を一喝する。薄情ではあるが、身を呈して作った逃走の時間を無駄にする余裕はない。
あの武器は明らかに密集した捜索隊を一網打尽にする力を持っていた。

南北戦争以降、小銃の強力な殺傷力が戦列歩兵式の歩兵運用を廃れさせ、機動性と軽便さに欠けるガットリングガンは野戦では役に立たない兵器となってしまった。しかし、戦術行動を取らない素人や民間人を一方的に掃討することにかけては未だに有用であることを駐在武官であるファラメルディアスは知っている。

そして、反撃手段を持たない相手がすることはひとつ。射程の届かない場所まで逃げて身を隠すことである。

捜索隊は、こんなことになるならもっと枝を切り開いて進むべきだったと後悔しながらも、手も脚も肌が出ているところは全て傷だらけにして走り続けた。



数分か、数十分か。ミーナがへたり込んだところで全員が足を止めた。



「何とか…ここまで逃げれば一旦は……」




06何とか逃げられたか












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第2話


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~モルゲンロートの手記~


林を抜けると、カーキのブッシュジャケットが似合う中年男性が立っていた。

「いやはやファラメルディアス様、お待ち申し上げておりました」

01セイヤン出迎え 「セイヤンと申します。遠路遥々みなさまお疲れ様でした」



セイヤンさんは、私たち全員に膝まづいて握手をしてくれた。
柔らかな笑顔とがっしりとした掌の硬い握手が、私たちを労おうという気持ちで溢れていた。


02握手 「この小路の先に野営に適した場所を見つけています。ご案内いたしましょう」





03道案内 「重い背嚢を持っていては靴が沈み込んでばかりだ。少し手伝え」

ファラメルディアスは無遠慮に自分の荷物をセイヤンさんに放り投げた。




04放り投げ 「おっと、これも頼むわ。両手が塞がってちゃ皆を守れないだろ?」

追い討ちをかけるようにヘンゼルさんがセイヤンさんに荷物を預けた。調子のいいというか、人の気持ちの分からない人だ。

でも、そう思う私もセイヤンさんを手伝うことはできなかった。私自身が、それどころではなかったからだ。



電波が通じない。




この日のために改造した空中線を違法出力まで回しても、最後に乗り継いだ島の岬に置いてきた基地局すら中継できない。圏外の雑音識別信号すら送れない。

短波帯に切り替えても駄目。

最後に確認をしたのはいつだった?
列の最後尾でぶつぶつと唸っていると、不意に侘助さんが振り返った。



05便乗


このまま直らないのなら、打ち明けなければいけない。でも……。







06第二話予兆






隊列は再び林を進んでゆく。
岬から見えていた表層の雰囲気とは打って変わって、鬱蒼と生い茂る幹と葉は太陽を探して曲がりくねって行った。

ナイフとロッドで先頭を切り進むのはファラメルディアスとヘンゼル。
その後ろにラバナーヌとポワゾン。
荷物をいくつも抱えた現地コーディネータのセイヤン。
翡翠、ミーナ、侘助。
最後尾ではモルゲンロートがせわしなく装備をいじりながら歩いていた。



07隊列 「この島は、ですねぇ。かねてより、幻の島と、呼ばれていました」


セイヤンが両手で抱えた背嚢の左右から顔を覗かせながら1文節ずつこの島を紹介した。


「幻の島?ずいぶん夢のある名前だね」

話に乗ってきたのは吟遊詩人、翡翠。
08翡翠 「そうで、ございましょう?なぜ、幻の島かと、申しますと」

息を切らせながらのテンポの遅い解説にミーナが早口で答えた。

09ミーナ 「それはかつて住んでいた原住民が外部との接触を拒んでいたからです。言語が他のアンダム諸島に住む部族と大きく異なることから数千年間ほかの島と交流せずに暮らしていたと考えられています。彼らは科学技術を有さず接触を試みたアンダム諸島の政府職員が島民に攻撃されて以来政府は干渉しない意向になっています」

「なんとまあ!お詳しいのですね、ミーナ様。セイヤン、感服いたしました」

「そうでしょうそうでしょう」と、侘助は満足そうにほくそ笑んだ。
10侘助 「重たい荷物を持って歩行をしながらの説明は非効率ですので私が続けます。残されている人工物の老朽具合から原住民は20年から30年前に『絶滅』していることが分かります。何かしらの事故または特定の疫病が蔓延したと考えられます。外部の血統が入らない数百人規模の島では珍しいことではありません」

「へえ、じゃあもう原住民に教われたりする心配はないんだな」

「ええ。ですが気になるのは現在の島の状態です。ここに植生する常緑樹が低温に弱い種ばかりであることからこの寒さと雪が異常気象であることは明白です。また上陸時に海面に出ない種類の珊瑚礁が露出していたのを確認しました。つい最近大きな地震か地殻変動があったことが分かります。いずれにせよこの島の気候は非常に不安定です。そして特筆すべきは瘴」

「分かった分かった。ミーナちゃんもあんまり早口で歩くと舌噛むぜ。もうすぐキャンプにつくんだろ?そこでしっかり話を聞くさ」

翡翠がそう言ってようやくミーナは静かになった。


後ろの大演説に耳をやりながら、ファラメルディアスはパーティを腐した。

「まったく、すぐに火が付くボンボンに聞いてもないのに喋り出す本の虫。それぞれ保護者が必要だな」

言葉の悪意はヘンゼルに向かって放たれたものだったが、ヘンゼルは反応しない。
ヘンゼルが歩みを止め、隊列を制した。


11ヘンゼルの制止 「気をつけろ……この森で、誰かが人を殺してる」

「おいまさか原住民か!?」

「はずれだファラメルディアス。火薬の匂いがする」



林の影から、落ち着いた声がした。
「然様。我は蛮族に非ず」






12虚無僧







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第1話



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~モルゲンロートの手記~

これが最後のトランスファーだ、と船頭が告げたボートに乗って、私は安堵していた。

ランゴーンを出発して早3日。
ベンガル湾に浮かぶアンダムの島々を、ひたすら乗り換えていった船がその度オンボロになっていくのを目の当たりにした私たちも、ようやくこの不安な船旅に別れを告げることができる。

とはいえ、ここからが本番なのだから気は抜けない。
道中ずっと背負っていたDXペディション用の遠距離交信機にようやく火を点せるのだ。

と、船の舳先に座っていたあの男が立ち上がった。

「まずはじめに言っておく。いや、何度も言ったことか。私はお前たちを信用していない」

01_ファラメルディアスの写真
シルクハットとサングラスの間から覗いた目は、猜疑心に満ちていた。
ファラメルディアス・フォン・ザクローゼン。この旅の依頼人だ。
帝国議会の貴族院議員らしいが、私は政治のことはよく判らない。

「どこの誰かも分からないお前たちが、私が呼んだ捜索部隊よりも優秀だとはとても思えんのだ」
返す言葉もない。私は、目を合わせないようにレシーバーの調整をしていた。


「お言葉ですがザクローゼンさん、その信頼する捜索の先遣隊が消息を絶ってもう3ヶ月だ」

隣に立っていた銀髪の男が大仰な身振り手振りで釘を刺した。侘助さんだ。
ファラメルディアスはいっそう眉根を寄せた。

「ここは私の推挙するスペシャリスト達に任せるとお約束いただいたはず。そこは最後まで信じていただきたい」


02_侘助の写真
「そして、私も信じていますよ?皆さん方」

侘助さんは振り返った。『スペシャリスト』と呼ばれた私たちはみな、困ったように笑うしかなかった。

「こんな奴らに幻の宝玉の捜索が勤まるものかよ。だからこそ私本人が同行すると決めたんだ」

ファラメルディアスは組んでいた腕を、コートのポケットに入れた。
「それにしても寒いな……。11月とは言え、アンダムだぞここは」

風は強くなり、さっきまで半袖でも暑かった体がぐんぐん冷えてくる。

船頭が指をさして呻いた。まるで見てはいけないものを見るかのように。
「なんだ……ありゃ、雪……か……!?」


私は受信器の位置情報を確認した。北緯14度。インドで言えばカルナタカだ。進むべき方角は間違えたわけではない。
常夏のアンダム諸島、私たちの目指す島の稜線が、薄く積もった雪で白く輝いていた。















03_ロゴ


























04_靴の写真
じゃぶり、と靴のウィングチップが冷たい泥で埋まり、ファラメルディアスは心底不快そうに独りごちた。

「すばらしい第一歩だ」


























05_翡翠の写真
「それでは、道中の星見をお願いいたします。翡翠さん」






06_ラバナーヌの写真
「すばらしい料理を期待しています、ラバナーヌさん」






07_ポワゾンの写真
「道中の衛生管理についてはポワゾン医師」





08_ヘンゼルの写真
「用心棒のヘンゼルさんの腕っ節は私が保証します」






09_ミーナの写真
「地理についてはミーナ女史、可能であればこの雪の解明も」






10_モルゲンの写真
「そしてモルゲンロートさん、本島との通信手段はあなたが頼りです」







侘助が一人ひとり肩に手を置きモルゲンロートたちを紹介したが、ファラメルディアスは聞き飽きたと言う顔だった。
「ふん、バラエティに富んだ連中なのは分かった。……碌な訓練を積んでいない素人だということもな」





「ご明察で。じゃあその素人の俺たちにアンタは何を託したんだい」
ヘンゼルが口を衝いた。


11_ヘンゼル2
「お前のことは知っているぞ、ヘンゼル(Hansel)、いや、ハンス(Hans)・エンゲルベルト・フンパーディンク。フンパーディンク家の秘蔵っ子だな」

全員がヘンゼルのほうを向く。フンパーディンク家といえば西の大きな魔術団体だ。

「この作戦は貴様のような自称風来坊に任せるには荷が勝ちすぎる。こんな所で油を売られて怪我でもしてみろ、私が困るんだ。膝に擦り傷を作る前に、グレーテに迎えに来てもらえ」

「手前ェ!黙って聞いてりゃベラベラと!」
ヘンゼルが前のめりになり、銅鑼のついたケインを振りかぶった。
椰子の木が葉を鳴らし、停留していた小さな船が大きく傾いで船頭がバランスを崩した。

ラバナーヌが慌ててヘンゼルを抱きとめる。
「まあまあヘンゼルちゃん。もう最後の船まで乗っちゃったもの、誰も後戻りはできないわ。喧嘩するのは帰ってからにしましょ?」
風の唸りは止み、ヘンゼルがケインを降ろした。

「成程、その強さならボディガードには十分か。皆を守れよ?私を含めてな」

ファラメルディアスはヘンゼルをなおも挑発しながら、荷物を肩にかけた。

「ああ、言い忘れていたが、現地の案内はコーディネータに任せてある。星見も地学も不要だ。待ち合わせ場所に向かうぞ」





12_聞いていません
侘助が眉根を上げる。
「聞いていませんが」

「言い忘れたと言ったろう。今伝えることに何か問題があるのか?」

「同行者の選択権は私にあることが契約にあった筈です」

「あの執事からは聞いてはおらんな。戻ったらクビにするとしよう」


ファラメルディアスは意にも介さず、船着場を背にして歩き出した。



13_出発






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